なまえとシカマルが甘栗甘へと入っていくのを確認した後、自来也とシカクも後を追って入店しようとした。しかしいざ店の前に立ってはたと気付く。目立つ。目立ち過ぎる。シカクはともかく自来也はただでさえ体格が良い。こっそりと入ろうとしても気付かれてしまうだろう。どうしたものかと頭を抱えたふたりにはどうみても上忍の威厳などなかった。



「あれ、おじさん? なにやってるんですか?」



 聞き慣れた声に振り向いたシカクの目に天の助けともいうべき姿が映った。それは猪鹿蝶トリオ、山中いのいちの愛娘、いのの姿。おそらく友人と甘栗甘へと来たのだろう、いのの背後にはふたりの女が立っている。



「あー……これから甘栗甘か?」

「うん、おじさんたちも?」

「いや……ちょっとな」

「?」

「あー……シカマルのヤツがなまえと、」

「え! どこどこ!?」



 そういって店内に向かって親指を向けたシカクにいのの目が一気に輝きだす。そのテンションの高さに若干引いたシカクだったが、とかく若い娘というのは自分のであれ他人のであれ恋愛話に興味津々なものだ。ましてや自分の幼なじみともなれば、気になって仕方がないのだろう。苦笑を零したシカクはここでふとあることを思いつき、含みのある顔でいのに向き合った。



「──いの、悪いがちょっと頼まれてくれねえか?」










 甘栗甘の一角にあるテーブル席。向かい合って座るふたりの間にはなんともいえない空気が漂っていた。こうして改めて向かい合っていることが気恥ずかしいのだろう。お互い無言のままに視線だけが忙しなく泳いでいる。



「あ、あのよ」

「は、はい!」

「……その、食ったらどっか行か、」



 ねえか、と続くはずの言葉は目の前にひょっこり視界に入ってきたいのの姿によって途切れてしまった。ニヤニヤと含みのある笑顔を向けながら確実にこちらへ向かってくるいのに嫌な予感がする。そのまま固まってしまったシカマルになまえは不思議そうに首を捻る。



「シカマル? どうかした?」

「なまえちゃーん、久しぶり!」

「あれ、いのちゃん。いのちゃんも甘味食べに来たの?」

「うん! ね、一緒に食べていい?」

「あっち行って食えよ」

「シカマルには聞いてないわよ。ね、いいかな?」

「え、あ、うん……」

「やった! じゃあお邪魔しまーす。ほらサクラとヒナタも座ろ!」

「狭いだろうが」

「だーいじょうぶ! テーブルくっつけるし。あ、なまえちゃんシカマルの隣に移動してくれる?」

「う、うん……」



 こうなるともはや誰にもいのを止められない。完璧にいののペースに乗せられているなまえにシカマルももはや溜め息しか出ない。敵は親バカ上忍だけではなかった。いやむしろ更に厄介な敵だろう。それでも自分の隣に座った、照れくさそうに笑うなまえの姿に仕方がないかと腹を決めて、シカマルはそれ以上抵抗することを諦めたのだった。



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