草木も眠る丑三つ時。昼間の喧騒が嘘のように静まり返る校内は別の意味で騒がしい。ここでいう別の意味とは人ならざるものである存在、つまり人間の言うところの妖かしがそこかしこをうろついて活動を始めていることを指している。だから矛盾はしているがこの表現に誤りはないだろう。現に私の隣にいる男などは人間には聴こえない声でもって先ほどから何やら叫びまくっていてうるさいことこの上ない。



「おい、人間だぜ」



 誰かが発したこの言葉にあれほど騒がしかった場が一気に静まり返った。なるほど窓から外を見ると、確かに校門の辺りに人影が見える。いち、に、さん……全部で六人。しかも男女の比率はちょうど半々。そこから割り出されたこの夜中の学校訪問の意図に私は深く溜め息を吐いた。



「はー……夏になると増えるんだよね」

「迷惑な話だぜ。オレたちゃ昼間大人しくしてるのによ」

「仕方ないよ……でも、少し驚かせて早々にお帰りいただこうか」



 重い腰を上げてそう言えば、心底めんどくさそうな表情を浮かべた同胞たちが次々とその姿を消した。あれ、みんな意外とやる気満々だったのか?










 ふよふよと漂っているうちに校内に潜入していた一団を発見した。今回の若者たちは一体どんなヤツらだろうか。ほんの少しの好奇心からそのまま天井伝いに一団へと近付いてみる。と、意外にもその一団の中に見知った顔があった。



(奈良、シカマル……だっけ、)



 現在の私のお気に入りは三階にある二年A組。お気に入りというだけあって昼間も私はそこにいるのだが、いつもいつも机に突っ伏して寝こけている男と、今そこで友達と喋っている男の顔がぴたりと一致したのだ。そうなると私の中に妙な親近感が湧いてくるのは仕方ないことだろう。何事にも興味なさそうなこの男が友達に誘われたくらいでノコノコやって来そうにない。となると理由はひとつ、あの三人の女の子の誰かが心配でついてきた、それしか考えられない。安心したよ奈良シカマル。君も健全な男の子だったんだね。ようし待ってなよ。私がめいっぱいその女の子を怖がらせてあげるからね!



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