「くっそ、どんだけ荷物あんだよ……」

「シカちゃーん、オレもうギブ! 海入りてえ」

「ズルいってばよキバ! オレだって早く海入りたいってばよ!」

「なら早く運べ」



 ああイライラする。足の裏に感じる砂の暑さと肌を焦がす太陽の暑さが余計にこのイライラを増長させやがる。だから来たくなかったんだ。
 事の始まりはいのからの一本の電話。あれがすべての元凶だったと断言してもいい。



「シカマル? 今度海行くんだけどアンタも、」

「行かねえ」

「あららー……そんなこと言っちゃうんだ?」

「なんだよ、どうせまた荷物持ちだろが」

「まあ当たってるけど、ちゃあんと美味しい報酬用意してるわよー?」

「……報酬?」

「んふふー……アンタにとってこれ以上ない報酬よ」

「……言ってみろ」

「んふふー……来てのお楽しみよ」




 くそ。上手くのせられた。いののヤツどっから情報仕入れてんだ。とにかくしばらくこのネタでいのには頭が上がらねえ。けどまあ、いのがアイツと仲良いのは事実だし、これが一種のチャンスだと思えば我慢するしかねえ。問題はコイツらだ。



「早くサクラちゃんの水着姿見たいってばよ!」

「そうだな。やっぱ海の楽しみは女子の水着だろ!」

「オレ、フリフリのワンピース希望!」

「オレはやっぱビキニだな! かーっ! やる気出てきたぜ!」

「……」



 気持ちは解る。解るんだけどよ……そこでやる気出るとかあからさますぎんだろ。お前らは盛りのついた猫か。頼むからそのギラついた目でアイツを視界に入れんじゃねえぞ。
 重い溜め息を吐いて再び荷物を肩に担いだ瞬間、それまで騒いでたナルトたちが急に静かになった。いのにでも聞かれて鬼のような形相にビビってんのかと振り向いた途端、目に入ってきた光景の持つすさまじい破壊力に持っていた荷物はすべり落ちていった。



「……どう、かな?」



 恥ずかしそうに笑うそのおとなしそうな顔と裏腹にその体を包む水着はえらく大胆なデザインで、なまえの後ろでニヤニヤ笑ういのに、オレはようやくいの言っていた「報酬」の意味を理解したのだった──










 羽織っていたパーカーを脱いで、なまえにはでかすぎるそれを無理やり押し付けた。オレ以外のヤツらに見せてたまるか。もちろんナルトたちからはすさまじい勢いでブーイングを受けたがそんなん知ったこっちゃねえ。こんなことならナルトたちは誘わなきゃよかったぜちくしょう。



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