寒さも本格的になって、そろそろ屋外の任務もキツくなってきた今日この頃。だけどオレは文句なんて何もない。今日だって吐く息は真っ白だけど、心の中はほかほかと暖かい。だってこの冬は特別なんだから──










「次の任務期間は一週間だ」

「あーハイハイ……って、はああっ?!」



 終わった……! 今日ほど自分が忍であることを後悔した日はないだろうってくらいオレは後悔しながら帰路についていた。さっきまでまったく気にならなかった北風が体だけじゃなくて心まで冷やしていくような感覚にオレの足取りは重さを増す一方だ。

 今年はサツマが生まれて、初めて三人で過ごすクリスマス。ベタだけどサンタさん役だって立派な父親の仕事だと思って衣装も一揃えしたのに、綱手さまはオレが密かに楽しみにしてるの知っててワザと任務入れたんじゃないだろうか。だとしたら相当ひねくれてるよね、アノ人。



「はあ……とりあえず一日でも早く任務終わらせなきゃね、」



 明日から一週間の任務。だけどクリスマスは任務真っ最中であろう五日後。こうなったら新米パパのプライドにかけて絶対に間に合うように帰ってきてやるんだからね。待っててサツマ(となまえ)!










 ──なんて気合いを入れて臨んだけれど、悲しいかな今日現在任務開始から五日目、つまりクリスマス当日。木の葉から遠く離れた任務地で、オレは現在予想以上の数の忍に囲まれて応戦中だった。
 早く帰りたい心中とは裏腹に、敵さんは増える一方でまったく終わる気配すら見えない苛立ちがますます募っていく。ざっと見て五十人ほど、殺気をびしばし飛ばしてやる気満々のむさ苦しい忍たちにもはや溜め息しか出ない。お前ら今日が何の日か解っててオレに挑んでんの?

 サツマのおねむの時間と木の葉までの移動距離を考えると、時間的余裕はほとんどない。と、なると手っ取り早く終わらせるにはアレしかないか。チャクラ消費量が半端じゃないから、こんな大人数相手に使いたくなかったけど、可愛いサツマのためならパパ頑張っちゃうからね!

 ゆっくり、静かにチャクラを集中させて、バチバチと火花を散らし始めた掌を振り上げた瞬間、オレの目には確かになまえとサツマの笑顔が見えた──










「……バカ?」

「……」



 呆れた顔して開口いちばん呟かれたなまえの言葉が心に突き刺さる。もちろん反論したいし、オレがどんなに頑張ってたかも伝えたいのに、指一本すら動かせないこの状況がひどくもどかしい。



「チャクラ切れで入院とか、上忍としてどうなのよ?」

「あーう!」

「……」



 なまえの手厳しい言葉に同調するように上がったサツマの声に気分はますます落ち込んでいく一方だ。いちばん手っ取り早いと思って自分のチャクラ量も顧みず雷切を乱発したオレ。敵さんを片付けたまでは良かったんだけど結局チャクラ切れで倒れて、なんとも情けない姿で木の葉に担ぎ込まれて即日入院するはめになってしまった。もちろんクリスマスに間に合う──なんてことはなく、窓の外を歩く人たちはすでに新しい年を迎える準備を始めているらしい。ああ、オレの幸せクリスマス計画が……っ!





「カカシ」



 落ち込むオレの横から不意にそれまでとは打って変わって優しげな声でオレの名が紡がれた瞬間、掌に感じたふたつのぬくもり。



「……カカシが、無事に帰ってきてくれて……本当に、良かった」

「あい!」

「なまえ……サツマ……」



 カカシが無事に帰ってくることが、私たちにとって何よりのプレゼントなんだからね──



 そういって照れくさそうななまえと、嬉しそうにはしゃぐサツマの笑顔に申し訳なさと嬉しさの半分入り混じった気持ちでいっぱいになる。だけどふたりの掌があまりにも心地良くて、オレをこんなにも大切に想ってくれるふたりの気持ちが嬉しくて。



 ごめんね、ありがとう──



 心の中でそう呟いたなら、まどろみの中、オレはひどく満たされた気持ちでいっぱいのまま、そっと眠りに落ちていった──





「サツマ、パパ寝ちゃったね……」

「あう?」

「ふふ……時期外れになっちゃうけど、ツリーはパパが帰ってくるまで残しておこっか?」

「あい!」






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