「で……?」

「聞くな……めんどくせえ」



 一夜明けた今日。任務帰りに無理やり付き合わされた甘栗甘で、シカマルはいのとチョウジの幼なじみコンビに問い詰められていた。
 話題は昨日のなまえの爆弾発言。偶然通りかかって聞いてしまったふたりは、事の真相を知りたくてうずうずしている。



「だってだって! 『お嫁さんになる』だよ!? しかもシカマルの!」

「うん、ボクもびっくりしちゃった」

「……はー……」



 ねー? 息もぴったりに頷き合う幼なじみふたりに、シカマルはもはや溜め息しか出ない。



「……? どしたのシカマル?」

「結構かわいかったじゃない」

「……んな問題じゃねえんだよ……っ!」



 持っていた湯呑みを持つ手に力を込めて、シカマルはふたりを睨む。
 シカマルのその剣幕にいのもチョウジも訳が解らず首を捻る。



「なんか……あったの?」



 ぐ。いのの問いにシカマルは思わず答えに詰まったなら。
 悪夢、とでも言うべき昨夜がまざまざと脳内に蘇り、思わず首を振って大きな溜め息を吐いた。












 もう遅いから、とシカクとヨシノに引き止められ、なまえはその夜奈良家に泊まることになった。
 風呂に入り早々にベッドへと潜り込むと、シカマルは溜め息を吐く。



「……なにが『お嫁さん』だっつうの」



 それでも嬉しそうに頬を染めたなまえに、はっきり断ることができなかった自分がいて。
 めんどくせえ──考えるのを止めたシカマルは目を瞑り、そのまま眠りに落ちていった。







 ごそごそ。息苦しさと妙な違和感にシカマルが目を覚ますと、こんもり盛り上がった自分の布団。
 思わずギョッとして慌てて布団を捲ったシカマルの目に映ったのは──



「てめえ……人の布団に潜り込んで何やってんだよ……?」



 シカマルの寝間着に手をかけて、今にも脱がそうとしているなまえの姿だった──



「未来の旦那様のお宝をちょっと拝見……? しとこうかと……えへ?」

「えへ、じゃねえ。とっとと出てけ」

「何で? 一緒に寝ようよシカマル」

「……お前と一緒に寝たらオレの身が危ねえ気がする」

「え……っ! それって……シカマルが狼になっちゃうってこと? きゃーっ!」

「アホかっ! 狼はお前だろがっ!」

「攻められる方が好きなのね! よしっ、頑張りますっ!」

「ばっ!頑張んなっ! 出ていきやがれっ、この変態っ!」



 ぎりぎり。シカマルの寝間着を下げようとするなまえと、そうはさせまいと必死で押さえるシカマルの攻防戦は、結局朝まで続いて。
 最終的にキレたシカマルが布団でなまえをぐるぐる巻きにして難を逃れるという、まさにシカマルにとって悪夢のような一夜だった。
 そんなことがあったとは微塵も思ってないいのとチョウジは相変わらずの不思議顔。
 今すぐなまえの変態ぶりを暴露してしまいたいシカマルだったが、そうなると襲われかけた自分のことも話さないといけない訳で。
 男の面子にかけて、それだけは何としても避けたいとシカマルはぐっと拳を握りしめて堪える。




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