「もう二度と、オレの前に顔を出すんじゃねえ」 シカマルの言葉が幾度となく脳内を駆け巡り、なまえの頬は乾くことなく滴に濡れていく。 ふらり。歩いている先はどこへ続いているかも解らない。それほどになまえは憔悴しきっていた。 「シ、カマル……」 がくり。シカマルの名を呟いた瞬間、なまえは力なく地面に膝をついた。 ぽたり。ぽたり。地面にはなまえの流した滴がいくつもの跡を残しては消えていく。 「あ……うああっ! シカマル……シカマルッ……!」 そのまま地面に突っ伏して、ただひたすらにその名を叫んでも、なまえの声は静かに揺れる木々の間に消えていくだけ。 「うああ……っ! あ、あああっ……!」 ──泣いて、泣いて。堪えていた感情をすべて吐き出すように、ただ大声で泣き叫んで── 嫌われているのは解っていたつもりだった。けれど、心のどこかで微かな期待を持っていた。 だからこそシカマルの拒絶の言葉はなお一層、なまえの心を深く切り裂いた。 「は、あ……っ、シ、カマ……ル、」 ぷつり。精神が耐えきれなくなったのだろう、シカマルの名を呟いた途端、突然糸が切れたようになまえの意識は途切れ、体はそのまま地面へと倒れていった── 「なまえ──約束、な?」 幼いシカマルの優しい声。照れながら笑う懐かしい顔。 駆け寄ろうと腕を伸ばした瞬間、その姿は遠く離れて。息を限りに叫び懸命に追い付こうと走れば走るほど、シカマルとの距離はどんどん開いていく。 「ま、待ってっ! 待っ……」 がばり。勢いよく飛び起きたなまえは、シカマルはおろか誰もいない静かな室内を茫然と見つめた。 「夢、だったんだ……」 ほう。ひとつ息を吐いてゆっくり呼吸を整えてみる。心臓はいまだ激しく波打ち、流れる汗が背中をじっとりと湿らせていく。 まるでシカマルとの関係が決定的になったのを裏付けるような夢に、なまえは唇を噛み締めて俯いた── . |