「いただきますだってばよ!」

「いいのかよ、オレまで……」



 ガツガツと湯気を立てるカレーを、皿まで食べそうな勢いで頬ばるナルトを横目にキバはこっそりなまえに耳打ちした。



「いいのいいの、たくさん作ったからね! はい自来也さま?」



 小さな卓袱台を4人で囲んでの夕食に嬉しさを隠しきれないなまえを自来也は微笑ましく見つめていたが、不意にナルトへ向かって真剣な表情を浮かべた。



「ナルトよ……なまえは木の葉に来てまだ日が浅い……ワシがおらん時は色々面倒見てやってくれのう?」

「おう! 美味しいカレーも食わせてもらったし任せろってばよ!」



 ぐっ。親指を立てて笑うナルトにキバは内心面白くない。なにしろなまえと最初に友達になったのは自分なのだから。



「ナルトじゃ頼りねえよな? オレが面倒見てやっぜ?」

「あんだとキバ!」

「あ? やんのか?」

「ナ、ナルトくん……キバ……」

「「ん?」」



 振り向いた先。頬をうっすら染めたなまえがもじもじしながらふたりを見つめていたかと思うと。



「あの……ふたりとも、よろしく、ね……?」



 ぽつり。蚊の鳴くような小さな声で呟き、なまえがぺこり頭を下げた。
 きょとん。呆気にとられた顔でなまえを見つめた後、ナルトとキバは顔を見合わせてふたり同時に吹き出す。



「ガハハッ! やっぱ面白えなお前!」

「なまえちゃん……空気読むってばよ」

「えっ、なに? 私なんか変なこと言った?」



 わたわたと慌てるなまえを楽しくてしょうがないといった様子でくつくつ笑う男ふたり。



「そうだ……なまえ、明日暇か?」

「へ……? うん、特に予定はないけど……」

「じゃあよ、オレの仲間に会わせてやんよ」

「あーっ! ズルいってばよキバ!」

「んだよ、お前も連れてくりゃいいだろ?」

「仲間……?」

「おう! ヒナタとシノっつってな、下忍ん時からの仲間なんだぜ?」



 向日葵のような笑顔を浮かべて話すキバに、なまえはキバの仲間に対する信頼を感じて思わず微笑む。



「ならよ、みんな呼べばいいってばよ」

「おっ、それいいな!」

「みんなって……」

「アカデミーの同期だってばよ」

「うし、決まりだな! オレ声かけとくからよ? 楽しみにしとけよな、なまえ」

「う……うん!」



 ワイワイと盛り上がるなまえとナルトたちを眺めて自来也は複雑な表情を浮かべていた。
 先日シカクに連れてこられた時のなまえを思えば、表面上はずいぶんと元気を取り戻したように見える。それはきっとキバやナルトに出会えたことが大きく影響しているのだろう。
 しかしなまえは知らない。キバたちの言う同期にシカマルもいることを。再会して、はたしてなまえが平常心を保っていられるのか? ──そう思うと自来也は手放しで喜ぶことができない。
 広くない里内のこと。遅かれ早かれいずれは再会する日が来るのは理解していたが──



「皮肉なものよのう……」



 ぽつり。小さな溜め息とともに吐き出された自来也の呟きだけが、誰もいなくなった居間に静かに響いていた──



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