やがて聞こえてきた声に顔を上げて、目に飛び込んできた光景になまえは唖然として立ち尽くした。



「な……っ、何人……いるのよ?」



 わあわあ。そこには数え切れないほどの人数がひしめき合っていて。
 しかも全員が同じ顔、同じ服装という状況に、なまえは頭が混乱する。



「おお、なまえ。来たのか」

「自来也さまっ!」



 いつの間にいたのだろうか、なまえの背後には自来也が立っていて。
 ようやく会えた自来也に安心したなら、なまえは背後の集団を指差した。



「自来也さま……弟子ってひとりじゃないの?」

「うん?」

「お弁当……全然足りないよ……?」



 せめて人数を教えておいてくれれば──教えてもらったところで、ここまで運ぶ術もないけれど。
 きょとん。なまえの呟きに自来也と男は顔を見合わせて。



「うわっはっはっ!」

「……ぷっ、」



 一瞬の沈黙の後、堪えきれずに笑い出したふたりをなまえはぽかんと見つめる。
 いったい何が可笑しいのか。まったく解らないなまえはふたりの顔を交互に見つめるが、ふたりはいまだ笑いが止まらない。



「ククッ……飯にしようかの。カカシ、ナルトを呼んでくれ」

「了解」

「なまえ、こっちに来い」

「う、うん……」



 自来也とともに歩き出したなまえはやっぱり後ろの集団が気になって仕方がない。
 ちらちらと後ろを振り返りながらついてくるなまえの様子が可笑しくて、自来也はますます笑いが込み上げてくる。



「ここでいいかのう。なまえ、弁当は?」

「あ、はい……」



 涼しい木陰に入り、木の幹に寄りかかって座る自来也に、なまえは持参した水筒を差し出して。
 敷物を広げて弁当の包みを開き始めた。



「おお、美味そうじゃの。どれ」

「あ……っ、まだお弟子さんが……」



 ぱくり。おかずをひとつ摘んだ自来也をなまえが止めようとした瞬間──



「あーっ! なに先に食ってんだってばよ!? エロ仙人っ!」



 たたた。走る音とともに聞こえてきた大きな声になまえは驚いて振り返った。
 見れば先ほどの集団ではなく、そこにいたのはひとりの少年。なまえは狐に化かされたのかと目を擦る。



「こらナルト、先に挨拶でしょうよ?」

「だってよー、オレってば腹減って……ん?」



 カカシと呼ばれた男が少年を優しく咎めると、いまだ呆けた顔のなまえに気付いたナルトと呼ばれた少年は、自来也となまえの顔を交互に見やって。



「……とうとうこんな女の子にまで手え出すようになったのかよ……エロ仙人」



 じとり。尊敬とは程遠い眼差しで自来也を見つめ、溜め息を吐いた。



「ほう。ワシにそんな口聞いていいのかのう……? 腹減っとるんじゃなかったか?」

「……? 減ってるってばよ?」

「なまえ、ナルトには食わせんでいいからの」

「っ、あ……っ! ズルいってばよ!」



 弁当をめぐってばちばちと火花を散らす自来也とナルトを、なまえは呆気にとられて見つめていたが。



「あ、あの……っ!」

「ん?」

「何だってばよ?」

「ほ、他の……お弟子さんたちは…?」

「ぶっ!」



 きょろきょろ。弁当の量を心配してか、辺りを見回しながら問うなまえに自来也とカカシは再び吹き出していた。


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