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※現代パロディです


アリババくんは見た目の割に恥ずかしがり屋さんである。チャラッとした金髪。チャラッとしたピアス。チャラッと着崩した制服。極めつけの、なんとなくチャラッとした雰囲気…!しかし軽そうなその風貌に反して、彼は至極真面目な人間であった。掃除の当番はサボらないし弱いものいじめなんか勿論しない。それどころか困っている人には声をかけずにはいられないとってもやさしい人だ。彼を知る度に微笑む時の目元がかわいいとか、割と泣き虫だとかどきりとするポイントがどんどん見つかって…気付いた時にはアリババくんにベタ惚れしてしまっていた。恋とは不思議なもので、無意識の内に相手のことを目で追ってしまっているのだ。それからはなるべくアリババくんの視界に入る努力をしたり、毎日熱烈な視線を送ったり…その他諸々の細々とした努力が実ったのか奇跡的にお付き合いすることになった。





…そんな彼は今、私の家に来たにも関わらず部屋にある漫画に夢中になっている。オイオイ…君が今背もたれにしてるの、ベッドだぜ…?目を爛々(らんらん)とさせながらページを捲るその姿はアリババくんらしい(空気が読めない的な意味で)と言われてしまったらそれまでなのだけれど、…でもやっぱり少しくらい私に構ってほしい。折角の密室なんだよ、家にいま誰もいないんだよ!…アリババくんから行動を起こしてくれないなら…。女は度胸!かましたれ!思いきってぴっとり肩に擦り寄ってみる。と、


「、くすぐったいよ、なまえ」


漫画から目を離したアリババくんは困ったようにはにかんだ。あっカワイイ…!じゃなくて!あれ…?いつも以上に服に気を使ったり、大人っぽい香りの香水を付けてみたりした…の…だけれど…。もしかして全然効果なしですか…!思わずアリババくんを凝視すると、彼も見つめ返してきた。一方は少しの期待を胸にひたすら見つめ、もう一方は見つめられるわけがわからない戸惑いを抱えながら、それでも目を逸らさずにいる。緊張した面持ちでお互いに暫し見つめあう。しかし次の瞬間には耐えきれなくなったのか、


「あ!」


アリババくんはこの静寂を断ち切るかのように一声吠えた。…かと思えば、「あの…えっと…」彼は床に視線をさ迷わせながら顔を伏せてしまった。大きな声だったから私は少しびっくり。アリババくんはと言うと、伏せてしまって顔は見えないけど、ほんのり赤みがかっている耳が彼の髪色に映えているのが見てとれた。どきり。心臓が波打つ。あ、少なからず私のことを意識してくれているんだなあ、と思ってしまったら、もう、たまらなくなって、私は、私は、


『あ、りばばくん』

「なんだよぅ…」


さらさらの前髪をかき分け、露になった彼の額にくちづけをひとつ、落とした。途端、アリババくんはがばっと勢いよく顔を上げる。「え、なまえ、い、いま…!」狼狽えまくるアリババくんとの距離を更に縮める。うん、チューしたよ。私なりに、がんばってみたよ。たぶんそういう雰囲気はつくれたと思うから、だから、火蓋はあなたが切ってください。

優しく肩を掴まれる。真剣な彼の瞳に見つめられ…そしてくちびるが近付いてきた。

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