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「なにしてんだブス」

誰もいない中庭で空に手をのばしてみたら、後ろから聞こえたのは我が国の神官様の声だった

「何回も言ってるけど私はなまえっていってブスって名前じゃないの」

「はっ」

鼻で笑われた
前々から思っていたけれど、ジュダルは私に対してとても失礼じゃないかな

呼ぶときはブスだしまともに話を聞かないしその他もろもろ

「で、何してたんだよ」

「別に、届くかなって思って手をのばしてみただけ」

当然届かなかったけれど
なんて広い空、綺麗に広がる澄んだ青

私はなんて小さい存在だろう

「届くわけねえだろ」

「分からないじゃん、いつか届くかもしれない」

心底呆れました馬鹿にしていますというような顔で見られても気にしない

これくらい信じてみても許されるでしょう

「ジュダルは魔法があるから、私より早くに届くね」

「お前はブスなうえバカ決定だな」

わざわざ私の隣まで来てドサッと座るジュダルに踏まれてしまった花を摘み取った

まったく、乱暴だなあ

「空が飛べるの、いいよね」

あれは飛ぶっていうよりは浮くだけれど

紅玉ちゃんに絨毯の感想を聞いたら「なまえの好きそうな感じよぉ」って言ってたから乗ってみたいのに全く機会がないし

「まあ、あれはな」

「普通に生きるより、綺麗な物がたくさん見えるんだろうね」

「綺麗なもの?んなもん何もねえだろ」

「あるよ。日の出の空に雨が降った後の庭でしょう、満天の星空とか日が射し込む森とかたくさんある。」

この世界は綺麗なもので溢れているのよ、と私に教えてくれたのは母様だ

いつも穏やかな笑顔を携えて私をいろいろな場所へと連れて行ってくれた

それはお花畑だったり、簪とかを売っているお店だったり

統一性は全くなかったけれど、どれも私にはキラキラと輝いて見えた

懐かしい、大切な思い出

「意味分かんねえ」

「そうかな」

こんなにも、世界は綺麗だというのに

「ん」

「…え、どうしたの」

ぼーっと空を見ていたら、ジュダルが立ち上がった

それだけでなくこちらに手を差し出す姿に何を企んでいるんだろうと無意識に一歩引いた

「チッ」

心底不機嫌そうに舌打ちをしたジュダルから聞こえたのは飛びてえんだろなんて呟きで

「いいの」

「別に」

ただの気まぐれだからな
と眉間にシワを寄せて言うジュダルに出そうになる笑いを押し込めて彼の差し出す手をとった

「わ、すごい」

「そーかよ」

遥か遠くまで見渡せるんじゃないかと思うその景色は思った通りとても綺麗で自然と頬が緩む

「ありがとうジュダル」

「別に」

ふいっと顔を反らしたジュダルにクスリと笑い私は空に手を伸ばした



Perfect Day

今ならきっと、手が届く

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