青春なんて甘美じゃない

柚羽と一緒に家を出た僕は、学校に着くまでの間彼女の話を延々と聞かされた。まぁ…もう、慣れたけどさ。
女の子ってどうして喋るのが好きなんだろ。どうでもいい話題を楽しそうに話してる。
僕は無駄な会話で貴重な時間を潰したくないっていうか、正直自分以外の人間の話題などに興味などない。そんな感じだから柚羽にはいつも“冷たい”とか“塩対応”とかよく言われてる。
仕方ないじゃん。これが僕なんだからさ。それとも、ベラベラ喋り倒す僕が見たいわけ?アホらしい。
柚羽の独り言を聞いている内に、学校へ着いた。僕と柚羽はジャージに着替える為僕は部室へ、柚羽は女子更衣室へと向かう。
体育館へ行くと先輩達と無駄に早い王様と日向が、ネット張りをしている所だった。準備が終わった所に柚羽が加わって朝レンが始まった。
いつもと変わらない練習内容と、景色。僕は淡々と練習をこなしていく。やがて朝レンが終わり、体育館倉庫へとボールを運んだ。その時、中から柚羽が出て来た。マネージャーでもある彼女は練習以外は、男子と同じ内容をこなしているのだ。

『お疲れ様、蛍くん』

「あ、うん」

『何それ。相変わらず塩対応なんだから』

「いつもの事でしょ」

『モテないよ』

「別にモテたくないし。柚羽ってさぁ、ほんと僕に絡んでくるよね。幼なじみだからってさ、ほっといてくれないかな。あーもしかして、僕の事が好きだったりする?」

なんて言ってみた。好きだから絡みたくなるって、誰かに聞いた気がする。
言ってなんだけど、柚羽が僕を好きになったりする?は…バカらしい。そんな事あるわけない。

『何ボーっとしてるの?』

僕の目前で、ひらひらと手を振ってる柚羽。

「別に」

『先に戻ってるから』

「わかった」

軽く返事をする。
女子の更衣室は本館にあるから、早めに体育館を出なくてはいけないのだ。
倉庫の中に入った僕は手慣れた手つきで、ボールを片づけていく。日向達は相変わらず騒がしいが、いつもの事だから気にせず放っておく。ほんと朝からウザい。
表情(かお)に嫌悪感を浮かべながら倉庫を出ようとした時、足元に違和感を感じて視線を向ける。シューズの下からは、薄桃色の紙がはみ出していて…。
足を僅かに上げると、封筒のようだった。それを拾い上げ、表と裏を交互に見る。宛名も差出人名もない。だが糊付けが浅いのか、うまくすれば開ける事が出来そうだった。
人の手紙を勝手に盗み見るのはどうかと思うけど、見つけてしまったら気になって仕方なかった。差出人名は書いてない。けど、柚羽が出て行った後に見つけたって事は、普通に考えたら彼女が落としたと考えるよね。
他の誰かなら興味はない。だけど、柚羽なら話は別。気になって仕方がない。僕は思い切って、中身を確認する事にした。多少心苦しい気もするが、落とした人物が悪いんだと自分自身に言い聞かせる。
何だろ、指先が震える。僕らしくない。
封を開けると、中には薄桃色の紙が一枚だけ入っていて…。やはり、誰かの手紙のようだ。悪いと思いながらも、紙を取り出し開いてみた。
中に書かれていた文は物凄く短いもので、
大好きです。私を彼女にしてくれませんか?
と、書かれていた。
どう見たってラブレターってやつだろうけど、そんな事よりも…

「…柚羽の字じゃん」

間違いなく彼女の字だった。ずっと見てきたんだから、間違えるはずはない。
それがわかった瞬間、心臓が引き裂かれるように痛んだ。

「……何これ」

左胸をぎゅっと掴む。ずきずきと、治まる事なく痛む左胸。
どうして…どうして僕は、心臓が弾けそうになってるんだろう。
手紙をくしゃりとポケットに入れて、制服に着替える為に部室へと向かった。

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