ひねくれ者の苦悩は続く

カーテンの隙間から陽の光を感じて、ベッドから身体を起こした。
また、うっとおしい一日の始まりか思うと頭が痛くなる。
僕はナイトウエアを脱ぎ捨て、制服に着替えた。
ここんとこ日向と王様バカ二人のテスト対策に追われて、めちゃくちゃ疲れていた。やりたくないけど、大地さんの命だから仕方がない。
元々あの二人とは、犬猿の仲だというのに面倒みろだなんて言われて、僕の精神は相当なダメージを受けていた。
その上夜は、自分の勉強までしなくちゃいけないから、疲労感ときたらハンパない。マジ勘弁してほしいんだけど。
大体どうして僕が、あいつらの勉強をみてやらなきゃならないのさ。マジムカつく。
――そして

『蛍くん、おはよっ!』

毎朝、毎朝元気いっぱいで乗り込んでくる女、柚羽。
どうして、そっとしておいてくれないんだろ。空気の読めないヤツらに囲まれて、このところ僕はずっと不機嫌だった。

『蛍くんってば、また朝から難しい顔をしてる』

「柚羽は、どうして朝からそんなに元気なんだ?小学生みたい」

『だって外、凄くいい天気だよ。お日様見ると、気持ちも明るくならない?』

「ならない」

『え――っ』

「ガキ」

超上から目線で呟くと、柚羽の頬がむぅっと膨らんだ。
柚羽はたまたま、うちの隣に住んでる女だった。近所付き合いをしている内に互いの親が仲良くなって、今ではまるで家族のように行き来をしている。
おまけにクラスも一緒、部活も一緒で一日柚羽を見ない日がない。

「柚羽ってさ僕の視界に映る率、ナンバーワンだよね」

『嬉しい?』

何を言ってんだが。

「全然。バカじゃないの」

僕はクスリと、悪戯っぽく微笑む。

『蛍くんってば酷い。こんなに可愛い女の子が、毎朝起こしに来てあげてるのに』

「頼んでない」

僕はツンとした態度で、さらっと言い放つ。
普通の男なら喜ぶだろう。確かに柚羽は可愛いし、性格だって悪くない。
男女共に人気があり、モテてるのも知ってる。モテて当然なんだろうけど、何だろ、そういうの考えた時いつも胸の奥がチクリと痛んだ。
それが何の痛みか今の僕にはわからなくて、ただ不本意な毎日が続いてるせいだと思った。

「もう来るなよ」

『おばさんに頼まれてるんだもの』

「僕はガキじゃない。マジ……ウザいんだけど」

さすがに、言い過ぎたかと思った。その証拠に言った瞬間、柚羽は俯いてしまったから。
僕は謝るのとか苦手だ。
たがら、こういう雰囲気には戸惑ってしまう。フォロー的な何かを言うべきか、このまま無視するべきか悩んでると、柚羽がふっと頭を上げずいっ顔を近づけてきた。

「……なに?」

『蛍くんのそういう態度って、マジ…ウザいんだけど』

「は……っ!!?」

目を見開いて驚く。
何、ソレ。ただの仕返しじゃん。
僕はますます、不機嫌になっていく。けど柚羽はまったく堪えてない様子で、華のような笑顔を向けてくる。

『早く下に行こ。おばさんに起こられちゃうよ。今日の朝ご飯はおばさんと私が作った、サンドイッチなんだから』

こうなった柚羽には敵わない。黙って、白旗を上げた方が利口だ。

「…………わかった」

ぶっきらぼうに言ってからカバンを持ち上げると、急かす柚羽と共に部屋を出た。

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