不器用な愛情表現

どうしよう。暴走し始めた気持ちを、抑えることが出来そうない。
きっと、柚羽を沢山傷つけてしまうだろう。けど、もう止められない。静かに収まるなんてこと、もう出来ない。

『どう言う意味?』

「どうって、言った通りだけど。聞こえなかった?それとも、聞いてなかった?」

『意地悪な言い方をしないで!』

「悪かったね。僕は性格悪いからさぁ」

蛍くんっ!

柚羽が声をあげる。
ほんと僕って性格悪っ。こんな事を言いたいわけじゃない。僕だって菅原さんのように、優しく接してやりたい。想いはあるのに、いざ柚羽を前にすると意地悪な言葉ばかり言ってしまう。これでは、好きな女の子に素直になれなくて苛めてしまう、ベタな少女漫画の展開だ。
ほんと、バカバカしい。あの王様にだって、先輩達にだって、梟谷の人達にだって思った事をずけずけと言えるのに。何をやってんだろ、僕は。こんなんじゃ、本当に柚羽を誰かに取られそうじゃん。悪いけど、柚羽の恋を応援してやれるほど、僕はできた人間じゃない。恨まないでよ。僕を幼なじみにもった、柚羽が悪いんだ。

「これ、何だと思う?」

『え……』

ズボンのポケットの中から薄桃色の封筒を取り出し、柚羽の目の前でひらひらさせる。途端に、顔色を変える柚羽。これが何だか、直ぐにわかったようだった。
そりゃそうでしょ。柚羽が書いた、ラブレターなんだからさ。
柚羽の顔が面白い程、どんどん青ざめていく。さっきから青くなったり、赤くなったりと大変だね。

『……返して』

「イヤだね」

『……返して』

「大好きです。私を彼女にしてくれませんか、だって」

蛍くんっ!返して!

「返してじゃなくて、返して下さいでしょ。せっかく拾ってやったのに。感謝されるならともかく、怒鳴られる筋合いはないと思うけど」

泣き出しそうな柚羽を前にして、不敵な笑みを浮かべる。酷いよねぇ、僕って。これで、きっと柚羽に嫌われた。嫌わない訳がない。
僕は両手で封筒を持つと、柚羽の目の前でビリビリと破いた。めちゃくちゃ、爽快。これでこのラブレターは、もう誰の物にもならない。誰も読むことはないんだ。
そう思うと、罪悪感より高揚感の方が凄かった。

「怒ってるの?柚羽」

『……蛍くんが持ってたんだ?』

「そうだけど?」

『私が探してること知ってたくせに、陰でまぬけな私のことを嘲笑ってたんだ!どうして……?酷いよ、酷すぎるよ、蛍くん……』

最後の言葉は、消え入りそうだった。柚羽の大きな瞳から、涙がぽろぽろと零れ落ちていく。嗚咽が辺りに響く。
あーあ、とうとう泣かしちゃった。僕は最低な奴だ。それでも僕は……。

「柚羽が悪いんだ」

今もその胸に、僕以外の誰かがいる。うらやましいよ。柚羽に大切に想われてさ。
ねぇ……柚羽は、僕が初めて好きになった女の子なんだ。だから僕じゃない誰かと、楽しそうにしている柚羽なんて見たくない。見たら、きっと耐えられない。
そんな事、あって良いわけがない。許さない。

『……返して、お願い』

「イヤ」

『蛍くんには関係ないでしょ!』

「大いに関係ある」

『何でっ?』

「は?マジで気が付かないとか、有り得ないんだけど」

イライライライライライライライラ、する。

「柚羽の事が、好きだって言ってんの!」

勢いに任せて告ってしまった。心臓が凄い速さで脈打ってる。
よほど驚いたのか、柚羽の大きな瞳が更に丸くなった。僕と柚羽の周りだけ、時間が止まったように感じた。

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