V





カツ_....ン......カツ.....



「ふうん......ここが帝人くんの家....ねぇ.....」



小さく呟いたはずの俺の声が静かに木霊する。
やっぱり俺ってついてるよね?
だって、周りの人は寝静まって、こんな季節にこんなコートを着てても目立たないくらい人通りが少ないし。
おかげで何をしてもばれなさそう.....。なんてね。冗談だよ、冗談。



それに、ね。ほらぁ......



「どうやら、帝人くんは起きてるみたいだね.....。」



俺の気配にも気づいてるんでしょ??



なんて鋭い子、なんだろうか。はは、静ちゃんみたいに君にも俺の匂いがわかるのかな?
早くも俺レーダーがついてるみたいで嬉しいよ。


その綺麗な瞳に俺を映して。その唇で俺の唇で俺の名前を呼んでよ。




君は一体俺のことをどれくらい知っているんだろうか。
間違いなく、紀田正臣くんに警告されてたよね?俺に近づいちゃ駄目だって。
あの子はきっと俺から君を守ろうとしていたのにね。



「悪い子だねぇ....帝人くん君っていう人は」



カツン、と最後にもう一つ足音を鳴らして彼の部屋のドアの前にたった。
そして俺の右手に握られて、蛍光灯の光を反射するナイフ。
安心して、大丈夫。君を殺そうとかそういった物騒なことは考えてないから。

ただ、俺は知りたいの。
帝人くんの全てが、ね。


無意識に、自分の口から笑い声が漏れた。それが、合図。



古びたアパートのドアを開けて、俺は。
まっすぐに俺を見る少年の首にナイフを突き付けてみた。




「こんばんは、帝人くん。」



自然と口端が上がったのを感じた。



(突き付けるよ、君の細い首に。愛という名の刃を)



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