Please, give me despair(絶望をください)


「….はぁ…..」

「ちょっと、シズちゃん。ため息つかないでくれない?なんかこっちの幸せまで逃げそうなんだけど…」

「あぁ?知るかよ。」

「…..ほんと、むかつくなぁシズちゃん。なんではやくしんでくれな…」




血濡れた自分の手をぼう、と眺めていると聞きなれた声が後ろから聞こえてくる。
いちいち神経を逆なでされるような、声。
振り向かずともそれが誰だかわかってしまう自分が何より腹立たしい。


折原臨也、歳はたしか俺と同じはず。
軍事訓練を受けていた時からの顔みしり、で偶然なのか必然なのか配属された場所が一緒だった。
俺は、こいつが嫌いだ。
人を自分の掌で転がすことが好きらしい。(本人ははっきりとは言わないがおそらくそうだ。)
閉じることを知らないかのようなその口は皮肉ばかりを生みだす。
いつものように俺に笑顔で死んでくれないか、といった臨也を殴ろうと、振りかざした右腕に誰かが、触れた。



「….静雄も臨也もやめろ、」

「あ、ドタチン!」

「…ほら静雄、帰るぞ。….臨也、お前また無断で抜け出してきたんだろ?...毎回言ってるが、怒られるのは俺なんだ、頼むから止めてくれ。」


俺の腕をつかんだ、男。門田京平。こいつも俺たちと同い年だ。
俺たちの中では一番しっかりとしているためかいつも俺か臨也が問題を起こした時、お咎めをうけるのは門田だ。…できれば、俺だって問題は起こしたくない。
が、相手が臨也なのだ。我慢できるわけがない。


「だって、気になるでしょ?自分のたてた作戦がどれほどなものか、ね。」

「…帰るぞ。」

「はは、わかったって!ほらシズちゃんも行くよ。」

「…..」

「静雄。」

「わかってる。」



夕日さす、風景。
俺らの背後にある風景が赤いのは、何も夕日がそこを照らしているから、だけではない。
たくさん殺した。
臨也が立ち止まりつづける俺にしびれを切らしてか声を掛けながら手を引こうとしたが俺はその手を掴めなかった。
掴めなかった、というか俺には掴む権利はない。
血濡れた、人殺しの手で、他者に触れること、なんて…..。臨也の白い手が赤に染められるのは、あまり見たくない。
気まずい空気が流れる前に門田が俺に声を掛けた。
臨也の瞳が俺から門田へとうつすものを変えた。



楽しそうな声を出しながら、門田にまとわりつく臨也と、うっとおしそうにしながらも弾きはがそうとはしない門田を見ながら思う。



この暗い闇に包まれた世界に生を受けたことが運命だとするのなら、
この運命に与えるものは全て絶望であって欲しいと。
どうせ、なにも掴めないのなら、何もいらない。仲間も、いらない。
失う可能性の方が高いこの世界で、失いたくないものなどつくりたくなかった。


ふいに、臨也の赤い目が俺を捕える。
そして、あいつにしては珍しい、自然な笑みを向けられて、泣きそうになった。


ひとつ、神に文句を言えるのなら、俺は迷いもなくいうだろう。
どうしてこの世界に俺を生んだ?否、そんなことはもうどうでもいい。
俺の命が戦うためだけにあるのだったなら、それはそれで受け入れる。

でも、何故?何故、俺はこいつとであったのだろうか?
俺は臨也が嫌いだ。今も昔も。
でも、守りたいと思ってる。昔からずっと。昔より強く、思う。
だから、神にひとつ文句を言えるのなら、俺はおそらくこういうのだろう。
どうしてこんな世界で俺は臨也に出会ったのか、と。



もしも、昔の自分にひとつ、忠告できるなら、俺は言うだろう。
死ぬほどつらくても、その気持ちを、押し殺せ、と。
人を愛することが、こんなにも辛いとは思わなかった。
愛すれば愛するほど、失う怖さばかりが増す。



俺は、どうして…..?
臨也を好きになってしまったのだろうか?



荒れはてる世界で、教えられるのは愛ではなく、絶望だけであって欲しかった。









********
刹那、よりも全体的に重い話になると思います!
とりあえず、一話目。ところどころに咎狗に影響されてることろがあったりしますがそこは目を瞑ってやってください←
全10話の予定です!1話は予想以上に長くなりましたがこれ以降はもうちょっと短い、はず.....です!!
お付き合い頂けると嬉しいです!(^^)!

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