Please, give me despair(絶望をください)


果てしなく広がる空は、果てしなく遠く感じた。




雑じり気のない、澄んだ空。綺麗な青。何の汚れも知らないかのようなその色は、常に高くあり続けあざ笑うかのように地上を見下ろす。
意味もなく、空に手を伸ばした。子どものころから絶えず、変わらずそこにある青。
あの頃よりも俺の身長は確実に伸びている。何センチも、何十センチも。
それなのに、一向に空までの距離は縮まらない。縮まるどころか、逆に離れていっている気さえするのだからたまったもんじゃねぇ。
伸ばした指は、何もつかめない。昔も今も何一つ……
変わらず、何もつかめない。ただ一つ、違うことがあるとすれば





空へとのばされた、この掌が血濡れていること、だけ。







俺が生まれたころ、この国は戦争一色だった。

戦いに勝利することが全て、より多くの強陣を打破したものこそ、英雄。
だから、戦え。それがお前たちの生まれてきた意味だ。


俺たちの世代は、そう言われて育ってきた。優しい記憶、なんざしらねぇ。
戦争訓練に明け暮れた日々だけがそこにある。
国にとって俺たちは兵器に過ぎなかった。
子どもほど洗脳しやすいものはないだろう。素直で、純粋で、それ故に残酷。
大人が望めば、子どもは期待にこたえようとする。親の喜ぶ顔が見たくて。
親が必死に仮面の下に隠した悲しみすら知らずに、ただ….


でも、俺たちが戦場に出る前に、戦争は終わった。
国家崩壊、という最悪なシナリオで。長期に及ぶ戦争が人の心を病ませたのだと、誰かは言った。
それが、嘘なのか、本当なのか、俺は知らない。
世界は平和になるのだと、また他の誰かは言った。


平和を知らない俺たちは、ただ困惑するばかりだった。
戦争のためだけに生きてきた俺たちは、存在意義を失ったも同然で。
今までの時間が全て無意味と化した。
そして、再びはじめられた国の政治。
『平和』のための再興。….それは強制的なものだった。
危険因子はつぶさなければ、と。前科のあるものはすぐに捕えられ、殺された。
強いられた平和は、恐怖に近かった。
何が何でも平和のため、。
政府の政策は日々変化した。よりよい明日のために、平和のために。


そしてそいつらの言う、よりよい明日のために、国が次に抹消しようとしたのは
俺たちだった。
幼いころから戦闘訓練を受け、相手を殺す術を熟知している俺たちを国は消そうと、した。



…それが結果として再び崩壊を招いたのは言うまでもないことだろう。たくさんの血が流れた。
崩壊した国は、東西に分かれてしまった。
それぞれが、それぞれの夢を歌った。


相反するそれが、再び人々を戦火に誘う。
どちらが、上にたつのか。
自分と違うものがあれば、優劣をはっきりさせたくなるのが人間の性、とでもいうのだろうか。
抜け出せない戦いのループ。


自分たちの国を守り、外敵を打ち負かさんと、そのための俺たちの力は矛先を変えた。
つい数年まで手を取り合ってきた仲間にその刃を向けることとなった。





そして、今に至る。



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