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肺から二酸化炭素を吐き出す。息が白い。
そういえば、最近肌寒くなったなぁ。なんて。


帝人くんに最近会ってない、というか俺が避けてるんだけど。否、訂正。避けてたんだけど。
会ったら会ったで悩んじゃって、でも会わないと余計帝人くんへの感情は募るばかりで俺の頭の大半を占めてしまう。


「まさか、この俺が恋なんてものをするとは思ってなかったよ」


それが、高校生になりたての子どもだなんて。
俺は人類を愛していたはずなのに、気がつけば一人特別ができてしまった。
思わず笑いがこみ上げる。最初は俺らしくもなく対応できない感情に困ったもんだけど、なんていうかあれだよね。
開き直ったみたい。俺は帝人くんを愛してる、それでいいじゃないか。
うん、なんの問題もないでしょう?

そう、俺は愛してるんだよ君を。だから


「帝人くんも俺のことを愛すべきだよねぇ」


意味もなく俺の手によってくるくると回されるナイフが、月の光を反射した。
今日は月が笑ってる。嫌味にもとれるほど口端を上げて。
あぁ、俺は前にも同じことを呟いたような気がする。



できるなら、あの無意味な言葉の羅列を忘れてほしいんだけど、きっとそれ無理、だよね。
愛とはなにか。その答えを見つけるのも趣味のひとつにしようかと思うよ。
だけど、唯一わかってることは


「愛とは純粋で、不純で。きらきらと輝くものであってどろどろと何もかものみ込むような醜いものなんだよ、きっと。」


愛は矛盾している。
美しくも歪んでいる。はは、素敵じゃないか。矛盾の仕方も人それぞれだ。


ひらり、と風でコートが翻される。
カツカツと音を立てて、俺は歩みを止めていた足を一歩、また一歩と動かす。
ブロック塀の上から見る池袋は今日も滑稽だ。
人、人、人人人人人人人ひとヒト
疲れ果てたサラリーマンはため息交じりに背中を丸めてあるき、不良ぶった高校生は未知の真ん中を胸張ってあるく。
みんなみんな、死んだ目をしている。何が楽しい?何を求めてこの池袋を徘徊する?
少なくともそこに澄んだ目をしている奴はいなかった。


あぁ、嫌だねぇ。俺って死んだ魚の目嫌いだから。連想されて仕方ないんだよね。
だから、今すぐ君に会いに行くよ。
ね、どこまでも澄んでいて、どこまでもまっすぐな瞳に俺を映してよ。



路地裏を突き進んで、俺の足は俺が考えるよりも先にあるアパートへと向かう。
少し、というかかなり古いそこに帝人くんはいる。部屋の明かりがついてることから間違いなくそこに、居る。


(俺と一緒に住んだらもっと良い生活ができるよ、なんてね)


そっと冷たいドアノブに手を掛ける。
この扉一枚の向こうに彼はいる。そう思うと自然と速くなる鼓動。
会いたい、怖い、愛しい、苦しい、愛してる、逃げ出したい.....そんな気持ちが俺の中を駆け巡るけど、いつもの笑みが浮かんでくる。
楽しみだなぁ、楽しみだなぁ、楽しみだなぁ....。ドアを開けて中へと侵入すると一体君はどんな表情を浮かべるんだい?
それを考えるだけでも心が躍る。


がちゃり....とゆっくりとドアノブをまわした。
中に居た帝人くんと一瞬、目が合う。



「やぁ、帝人くん。久しぶりだねぇ。」


その小さな体をその場に押し倒して、その上にまたがって。
白く細い首に俺の手を掛けて、俺は笑う。


(彼の肩が少しはねたのを見て、俺は乾燥した自分の唇を舐めた。)



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