中編





ざ.......い...や.......臨也



どこかで誰かが俺の名前を呼んでる。それは確かにわかっているけど、誰なのかもわからない。
まるで広い海にでも投げ出されたかのようにゆられる体。
そこには何もなくて、ただ闇が存在する。素直に怖いと、体が感じる。
ここは嫌だ、と思ってもがく。そして叫んだ。


シズちゃん、と。


「臨也!!」


そこで一気に覚醒した。




「.......あれ?」

「大丈夫か?うなされてたぞ」


視界に映るのは心配顔のシズちゃんで。大きな手が俺の右手を握ってた。
シズちゃんの話によれば俺はどうやらドタチンによって新羅宅に運び込まれた、らしい。
と、そこで俺は重大なことに気がつく。
シズちゃんに握られてるのは、俺の右手だ。
そう、大事なものをなくした右手だ。

「......っっ!!」



思わず振り払うように右手を振るった。どうしよう.....というか俺は一体どうしたらいいのだろうか
指輪を失くした、なんて言えない。言えるわけがないじゃないか。
だってシズちゃんが一生懸命働いて買ってくれたものだ。
それをどんな顔をして失くした、なんて言えるだろうか。


「.....いざ、や....?」

「.....ごめん、なんでもない......大丈夫」

「でも手前真っ青だぞ」

「っっなんでもないって!!」


どうしようもなくて、いつもなら勝手に言葉を並べてくれる口も、言葉を紡いではくれなくて。
布団を頭からかぶって、シズちゃんから逃げた。


「臨也!!」


途端、シズちゃんの怒声が部屋に響く。空気が、痛い、冷たい。
でも、どうにもできない。


「........ほっといてくれないかな」

「ふざけんな!死にそうになって帰ってきてそれはねぇだろ」

「.........」

「......心配掛けてんじゃねぇぞ、ノミ蟲」


目が熱い。俺なんて心配される価値ないんだけど、と心の中で悪態をついても肩が震える。
それに気づいてか、はたまた単なる偶然か。まぁ多分後者だと思うんだけどシズちゃんが俺を抱きしめる。
ゆっくりとした動作で布団がはがされる。青のサングラスが目の前に映る。
あ、と思った瞬間には唇にあたたかい感触。


「......ん.....ふ...ぁ.....」


頭の後ろにまわされた手のせいで頭が痛い、罪悪感からか心が痛い。
なにもかもわからなくて、ただ涙が溢れる。


「泣くな」

「......るさいな」

「臨也」


目の前のシズちゃんが優しく微笑む。それがまた申し訳なくて、でもすごく安心して。
気がつけば首に手をまわしてた。


******
.......と、とりあえず後編にいこう....!!
なんかもういろいろごめんなさいとしか言いようがないぞ!



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