【掌編】それを指折り数えて幾千年@
2013/06/22 16:15




 冷たい水に沈み、死にゆこうとする青年の手を取った──青年の手を取った者は、そう認識した。

 浮かび上がろうとする手は、見えぬ死神に捕まった──青年の残り僅かな意識は、絶望を覚えた。


 約束された未来を断たれ、裏切りに因る死を迎える青年に、『精霊』と呼ばれる者は代わりの人生を与えようと考えた。
 何故なら、青年があまりに憐れであると思えたから。世俗の煩わしい全てから解放してやる事が、青年にとって最も幸せであると、そう信じてしまったから。
 水中にあって青年の指に絡む冷たさは、まるで人のもののように振舞い、対の手が青年の頬を撫でた。
 無力感に支配される青年の脳は、忘れてしまえと響く優しい声を聴く。
 精霊が青年の命を繋ぎとめると、青年は深い眠りに入っていた。精霊は喜んで、死んだ魂を慰める事に決めた。



  (つづく)



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