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何となく、予想はしていたのだ。
最近少し距離が開いただとか、メールの頻度が減ったとか、ほんの少しのことだけれど。ああ、そろそろ潮時かもしれない、なんて思っていた矢先に彼氏にふられた。彼氏だった人は優しいけれど口下手で、サッカー部で頑張っていて。サッカーをしているときとか、友達といるときにチラと見える少し幼い笑顔に惹かれたなんて知らないんだろうな、なんて思いながら先程から止まらない涙をタオルに染み込ませる。女の勘、というやつなのだろう。たとえその女の勘が当たっても、予測出来ていたからと言ってこの悲しさは覆すことはできない。ポロポロと目から出てはタオルに染み込んでいく涙を止める術なんて今の私には、ない。

私だけだった教室のドアがガラリと音をたてて開いた。その音に少しばかり肩が跳ねた気がした。涙も少し止まった。おそるおそるドアの方に目を向けると呆れ顔の花宮がいた。どうやら部活の途中だったようでTシャツに動きやすそうなズボンをはいている。
花宮とは普通に話す仲だ。普段、猫を被っているが私の前では被っていない。でも時々相談に乗ってくれたり勉強を教えてくれたり、ちょっとひねくれてるけど根は優しい奴だと思う。
花宮は呆れ顔のままこちらに足を進める。え、そっとしておいてよ、なんて思うけれど花宮はどんどん近づいてくる。あ、夕陽が髪の毛に当たって綺麗だな、なんてちょっと違うことを思った。
机を挟んで目の前に立った花宮を座ったままチラと見上げる。呆れ顔のまま私を見ている花宮がおもむろに口を開いた。

「バァカ」

「ひどい」

ひどいのはお前の顔だバァカ、と言葉とは裏腹に優しい手つきで目元を拭われる。ふはっひでぇ顔、なんて言いながら私の頭をポン、と撫でる。やめろやめて泣きそうだから。ほら、また出てきちゃったじゃないか。ポロポロと涙が落ちていく。優しい手つきで頭を撫でられる。今優しくしなくてもいいじゃないか。

「ほら、俺にしとけって言っただろバァカ、泣き止めよ。」

「な、に言ってんの。」

おもむろに近づいてきた花宮と発された言葉に動揺した。いや、俺にしとけって、言ってたけど。あれは冗談で、今の抱き締められてる状況も何かの間違いで。でも花宮の声がすぐ近くで聞こえる。ずっと好きだった、って。状況に着いていけなくて固まる私の近くでふはっ、と笑った花宮が何かを言う気配がした。ああ、きっと冗談だよバァカって言うんだろうな。なんて安心と少しの落胆が交ざった気持ちで耳を澄ます。

「冗談じゃねぇからな、本気だ。」

その後花宮の体が離れて真正面からまっすぐ見られて、いつもの意地の悪い笑顔じゃなくて真面目な顔で告げられた言葉に顔が火照るのが自分でも分かった。


幕の下りた舞台の上で君は言った

(好きだ、と)

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