log2 | ナノ
俺がなまえの部屋に来てから数時間。外はすっかり暗くなり、街灯に光が灯る。時計は今8時を指す。そろそろ帰らないといけないとは思うのだが…ちらり、横を見る。そこには俺の右手を弱々しく握り、下を向いたなまえの姿。

「…なあ」
「何?」
「なんかあったか?」
「なんにもなかったよ」
「ならいいけど」

なんだこの会話。少しの言葉を交わしてまた沈黙。時計の針が動く音しか聞こえない部屋はなんとも寂しい。右手を握る手は強くなったり弱くなったり、遊ぶように握ってくる。それを見ているとなまえが不意に笑う。

「幸男の手って大きいね」
「そりゃ男だからな」
「ごつごつしてて男らしい手」
「そうか?」
「うん、黄瀬君と違って」

黄瀬君は細くて、ごつごつしてないし綺麗だから、笑って言うと俺の手を持ち上げ両掌で遊ぶ。俺の手はごつごつして男らしいと言う。反対に彼女はふに、と柔らかい。白くて細い綺麗な指。俺の手とは大違い。手なんか握ると折れてしまいそうなほど細い。俺の手で遊ぶなまえの手をとり、今度は俺が握ってみる。

「お前は細いな」
「女の子ですから」
「女でもたまにごついヤツいるぞ」
「私は部活とかしてないし、それでかも」
「それもあるな」
「うん」

ふんわり笑いかけてくる顔が可愛かった。俺は少し顔を熱くさせそっぽを向く。ほんのちょっと赤くなっているであろう顔を見せないために。でもなまえはニッと歯を出し「幸男顔赤い」なんて茶化してきた。睨むように見ても怖がりもせず笑ってる。俺はため息をつき肩を落とす。するとなまえはまた俺の手を掴み握る。

「幸男の手ってごつごしてて男らしい」
「それ、さっきも聞いたぞ」
「うん言った。それにね握ってるとなんだか落ち着くの、手だけじゃなく傍にいてくれるだけでも心が暖かくなる」

下を向き乾いた笑いをするなまえはどこかいつもと違う。俺が帰ろうかと時計を見た時から様子がおかしい…と、付き合い始めた時の俺はこう思っていただろう。コイツとも長い付き合い、ただ手を褒めているだけの言葉の裏にそんな事を思っていたなんて、気づくのは俺ぐらいだろうな。
俯くなまえの頭に手を置き撫でる。すると目を丸くさせ俺を見れく目には少しの涙が溜まっていた。ほらな、俺は得意げに笑い髪に手を滑らせる。

「いつになったらその悪い癖直すんだよ」
「幸男、」
「まあ、もう慣れたけど」
「…ごめん」
「謝るくらいなら直せ…今日は寂しがり屋なお前のためにもう少しいてやる」

特別だ。そう言えばなまえは驚いた顔をしながら涙を流す。唇を食いしばりポロポロ手に落とす。俺は雑に頭を撫でた後、両頬を横に引っ張った。

「つーか泣くな!」
「だってっ…」
「次、泣いたら帰るからな」
「え、やっやだ!」

頬を握る手に掴みかかるなまえは必死でなんだか笑えた。泣くのを我慢した顔は微妙で可愛いとも言えない顔。たまにはこういうのもいいかもしれない。そんな事を思いながら寂しがり屋のなまえに笑いかける。


企画「ntlr」さま提出
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -