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好きです、そんな言葉は聞き飽きた。絶えない毎日の告白にうんざりする。そりゃ、俺はモデルをしていて顔もいい、スポーツも見れば何でも出来てしまう。女が集まるのもしょうがない。でもさすがに疲れる。女なんてみんな同じ。モデルと付き合っているという肩書が欲しいだけ。友達に自慢できる、モデルの隣を歩いている自分は凄い、それを目当てに近づいてくる。本当バカばかりでさすがに笑えるよ。俺はそのバカ女達にとって格好の獲物でしかない。そして、今日も女が来る。
パッと見普通の子。今までの人達がケバかっただけなのかもしれないけど、この子は俺に告白してきた人の中で一番普通だった。綺麗な髪、薄っすら化粧をしている顔。制服も着崩したりしていない。正直、この類の女は初めてかもしれない。

「君、名前は?」
「え…みょうじ、なまえ」

俺を利用して自慢をする。モデルというブランドを持ってさぞ鼻が高いことだろう。女なんてみんなそうだ。金で釣ればホイホイ来るように、容姿や肩書があれば近寄ってくる。俺の考えることが酷いと思う人もいるかもしれない、でも事実何度もあったから信じられないんだ。どうせなまえもそうだ。間違いない。

「別に付き会ってもいいっスよ」
「え、」
「よろしくなまえちゃん」
「…」

俺はなまえに近づき頭に手を置いた。何カ月続くかな?いや、何日かだな。こういうタイプは長続きしなさそうだから。別れるのも早い方がいい、相手のためでもある。頭を撫でながら考えていた。その時パン、と手を叩かれる。それは紛れもないなまえの手で。

「なまえちゃん?」
「…やっぱりさっきのなし」
「え、」
「告白、無かったことにして」
「なんで?なまえちゃん俺の事好きなんスよね?」
「好きだよ、でも今の黄瀬君は嫌い」

意味が分からない。こんなの初めてだ。俺より背の低いなまえは軽く睨みをきかす。今の俺って何?いつも通り告白を受けて、いつも通り付き会う。それが嫌いって言うならなまえは俺の何が好きなの?

「私は純粋に黄瀬君を好きになった」
「純粋…?」
「バスケしてる時とか、黒子君たちと話してる時の黄瀬君」
「なんスか、それ」

分からない。純粋って何?こんなの俺を落とす嘘の言葉。信じられない。

「嘘っスね」
「黄瀬君」
「そんなこと言って本当は肩書きが、」
「そんなのいらない、欲しくない」

なまえは俺に近づき手を握ってきた。彼女の若干震える手に俺は驚きつつ目を開く。

「黄瀬君もういいよ」
「…」
「私が好きになる、モデルとしての黄瀬君じゃなくてありのままの貴方を好きになるよ」
「…っ」

なまえは小さく笑い握る力を強くする。その瞬間、俺の中で重荷がすとんと落ちた。モデルとしての俺じゃなく、ありのままの俺。今までこんな言葉聞いた事がない。「雑誌いつも見ててかっこいいなと思って」とかモデルの黄瀬涼太としか見られていなかった。けど、なまえはちゃんと俺を見てくれようとしている。本当の俺を好きになってくれると言った。ずっと認めて欲しかったのかもしれない、俺自身を。ずっと待ってたのかもせれない、この言葉を。
途端、胸が熱くなる。次第に溢れ出る涙をなまえは腕を伸ばし指の腹で拭う。

「黄瀬君って案外泣き虫なんだね」
「これが本当の俺っスよ」
「うん」
「それでも…好き?」
「うん、大好き」
「アンタも物好きっスね」
「よく言われる」

嫌味のように言うとなまえは歯を出して笑う。俺はそんな彼女の腕を引き、自分の腕の中へと閉じ込めた。強く、強く抱きしめる、するとなまえは「甘えん坊」と一つ呟き俺の背中に腕を回した。

企画「Kissed Crying」さま提出
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