キッツイ練習の後のダッシュはキッツイ。けど、足が止まらない。水無月、ごめんな水無月。オレ、知ってたのに。水無月が言葉にするの苦手だって、知ってたのに。

ごめんなごめんな、って言葉にしないで謝る。謝りながら、探す。校門に着く。軽く見回す。いない。

頭の中で視点を切り替える。校門付近の大木の裏、いない。近くの自転車置き場、いない。やっぱり帰ったんだろうか。……そうかも知れない。先に帰れなんて言っておいて、待っててもらおうなんて都合良すぎる。


「…だよな。」


仕方ない。連絡して家に行ってみようか、とスマホを取り出した。パスコードはモチロン水無月の誕生日。


「高尾?」


最後の数字を入れようとした手が止まる。反射で振り向いたらそこには、


「カンナーーーーーっ!」

「わっ!何なになになにてか名前えぇええ」


オレより頭1つ小さい細い身体を力いっぱい抱き締める。ぎゅぅぅぅ。カンナが背中を叩く。恥ずかしい放してぇぇ、と耳元がくすぐったい。

本当はもっときちんと謝りたかったのに。こんな、勢いじゃなくて、ちゃんと。でもごめんが溢れる。


「カンナ、あのね!好きだから!ごめんな。オレ知ってたんだ。カンナが言葉にするの苦手だって、なのに、ごめ、ほんと、ごめんなぁ…!!」

「ふぁ?!緑間なんか言ったの!?てか分かったから放してよぉおおうー!人!人いる!見てる!見られてるから!」

「知ってる!でも知らない!!」

「はぁあー?!てか苦しいー!」

「高尾ぉおお!貴様!誰が校門で水無月を襲えと言ったぁああああ!!」

「ぅ、げ?!真ちゃん?!」


後ろから真ちゃんの声、しかも結構走ってくる。そんでお怒りだ。「走れカンナ!」手を引いて走り出す。オレとは違うふわふわした手を取れば、わけがわからないままついてきてくれる。可愛い。


「オレさ!」

「な、なに!?」

「カンナの、授業中突っ伏して寝るとことか、笑うと可愛いとことか、髪下ろすと雰囲気変わるとことか、」

「わぁああ!何言ってんの高尾ー!!」

「感情の起伏少ないとことか、テンション上がると変になるとことか、あ!絵上手いとこも!全部!好きだから!!」

「すっ!?」

「ね!」


走りながら再告白。どんな青春ドラマだとツッコむ。後ろから、真ちゃんが追って来る。でも本気じゃない。


「わ、たしも、」

「え?」

「たかお、の笑顔が、好き。てか、かずな、りが、好き。」

「!!!」

「なかなか言葉に出来なくて、ごめん。」


ぎゅっと手に力を込めてきた。可愛い。名前呼ばれた。なんだよ、もう。可愛い。好き。やばい。キスしたいけどここじゃ怒られるから、とりあえず手を握り返す。

真ちゃんが諦めて足を止めるのが見えた。目の前の公園にカンナを引っ張る。


「カンナ、好き。ごめんね。」


肩で息をしながら再び抱き締めた。カンナも肩で息をしている。小さくもう一度、わたしも、って聞こえてきた。しばらく二人ではぁはぁ言いながら抱き合っていた。変な絵面だ。そしたらカンナにいい加減放せって脇腹を殴られた。

いてぇ。

















見えるもの見えないもの

(ちゃんと試合観ててくれてありがとね。)(?! なんで知って…緑間なんか言った?)(うん。でも言われなくても知ってた。試合中でも、オレがカンナを見逃すわけねーじゃん?)(……くそ、ハイスペックが。爆発しろ。)
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