「水無月ってさ、オレのこと、好き、なんだよね?」

「…………は?」


ごちゃごちゃになったオレは、次の日に思い切って聞いてみることにした。ちなみに今日は寝不足で酷い顔だ。

屋上で昼ご飯を広げて真ちゃんを待っている間、つまり今は水無月とオレしかこの空間にはいないはずなのに、さっきから水無月はスマホをいじってばかりでオレと会話する気なんか微塵もない。

そこへ、爆弾を投下してみる。


「……急に、何を言うかと思えば。」


水無月はちらりとスマホから視線を上げて一瞬オレを見ただけで、またすぐに視線を落としてしまった。

「うん」とか、「まぁね」とか、冷たくてもいいから肯定の言葉が聞きたかったオレは、なんだか無性にイライラしてしまって、完全なる作り笑顔を浮かべてそのまま立ち上がった。あ、開ける前だったパンの袋を掴んで。


「ごめん。そういや宮地さんに呼ばれてたんだった。ちょっと行ってくるわ」

「そう。」

「そうだ、放課後も、今日は待ってなくていいから」

「……そう」


声がなんとなく暗くなった気がして、背を向けたまま見た水無月の顔はいつもと変わらない。視線もスマホに向けたまま。気のせいか。


一緒に帰れないことを寂しくも思ってくれないのかと、いよいよオレも悲しくなってきて、引き攣った笑いを張り付けたまま屋上のドアを開けたら、階下に今まさに階段を上がってきた真ちゃんがいた。


「どうした。忘れ物か?」

「うん、まぁね。悪いけど、昼休み中戻って来れねぇかも」

「なんだ、また課題を忘れたのか」

「まぁ、そんなとこ。」

「ふん、馬鹿め。」

「はは、ひっでぇ」

「…早く終わらせて来い。水無月が寂しがる。」

「……ん、りょーかい。」


水無月はオレがいなくても寂しがったりしないよ、っていう言葉がここまで出かかったけど飲み込んで。


「んじゃ、いってくんねー!」


いつも通りの笑顔で真ちゃんにも背を向けた。




















『オレ、だよね?』


目の前に立つ女の子は耳まで真っ赤にして、「ちちちちち違うの!これはその、人の動きを描く練習をしていただけであって、決して高尾くんかっこいいなぁなんてそういうあれじゃなくて!」と言う。

同じクラスの水無月カンナだったことに気付いたのはしばらくその子を見てからで、なんで気付かなかったのかって言われると、水無月がいつもしていた眼鏡をしていなかったからで。それから、いつも結んでいた髪も解いていたからで。真面目な印象しかなかった女の子の変身に面食らう。

はっきり言ってオレの勘はその程度の言葉で誤魔化しきれるほど悪くはなかった。

自分を好きになってくれた子を自分も好きになる話なんて、小説にも漫画にも日常にも割とありふれた話で。

その日からとにかく水無月を眼で追う生活で。

話しかける度に赤く染まる頬が愛おしくて。



告白したのは、オレからだった。


水無月は本当にオレのことが好きなんだろうか。自信はあるけど確証がない。距離を置くべきなんだろうか。考えたって答えは出ないし、面と向かって聞いたって、水無月は応えてくれない。






















我に返ると手の中にはボールがあって、遠くで宮地さんの怒号に近い声が聞こえた。意識を戻してパスしたボールは真ちゃんの手の平に収まって、そこから綺麗な弧を描いてゴールに吸い込まれていった。

危なく宮地さんに蹴られるところだった。
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