それからの笠松は変だった。とにかく他に形容の仕様がない程に変だった。毎日溜め息はつくし、ぼーっとしていることが多くなったし、終いには夜眠れず、朝練に遅刻してきた。誰よりも練習熱心な笠松主将が、だ。部員達は心配した。その様子はそう、まさしく…



「か、笠松センパイ…ま、まさか水無月っちのこと…」



部員から「聞いて来い!」と白羽の矢がたった黄瀬が恐る恐る話すと



「ちちちち違うっ!好きじゃない!断じて!オレは女に現を抜かしている暇なんかぁぁぁあ!」



と言って走り去って行く始末だった。こりゃあいよいよ大変なことになったと思い、朝練後の部室で頭を働かせる早川、小堀、森山の3人のもとに、黄瀬が走り込んできた。



「たたたた大変っスー!」

「黄瀬!(れ)んしゅうサボってまでなにが大変なんだっ!」

「早川センパイ今はいいんスよそんなこと!みみ見てくださいっスこの記事!」



3人が恐々と黄瀬の指差す雑誌のインタビュー記事に目を落とす。そこには艶やかな笑みを湛えて微笑む水無月の写真と共にこう書いてあった。



『Q1、今好きな人はいますか?』
「A、はい。います。」

『Q2、その人は一般人?業界の人?』
「A、一般の方です。」

『Q3、その人はどんな人?』
「A、バスケに一生懸命にうちこんでいて、真面目で紳士な素敵な人です。あ、女性が苦手みたいで、こないだは緊張されちゃいました。そんなところも、素敵ですけど。」

『Q4、どれくらいの間好き?』
「A、去年のインターハイからです。たまたま友達に連れてかれたんですけど、そこで一目惚れしちゃいました。」

『Q5、その人とはどんな感じで話す?』
「A、一度だけお話したんですけど、緊張で思ってもない生意気なこと言っちゃいました…。多分嫌われちゃったと思います…。私、あまのじゃくなので…。(うるうるとするカンナさん)」

『Q6、因みにそこまで言っちゃって大丈夫?』
「A、さぁ…?事務所には怒られちゃうかも知れませんけど、嘘はつきたくないし、彼は雑誌も見ないでバスケをやってるから、バレることはないので大丈夫です!」




「「「「……………。」」」」




「か、」

「「「「笠松(センパイ)ーーーーっ!」」」」




4人の声が部室にこだました。









糸が切れても

(ねぇ、今日はどこに連れてってくれるの笠松さん?)
(ゆゆ、ゆ遊園地に…っ)
(んー、そんなところよりバスケしてる笠松さんが見たいからストリートバスケ場に行きましょう?)
(お、おう)



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