「女って怖いな。」

「あら、征十郎より怖くないわよ?」

「いや、さっきのカンナには僕も敵わないかも知れないな。」

「大丈夫よ。夫婦喧嘩になっても、私は征十郎の敵にしか怒らないから♪」

「それはつまり夫婦喧嘩は起こらないと?」

「そうとも言うかも知れないわね♪」



なんの根拠もない私の話を信じたバカ共が顔色を悪くして去って行ったフードコートで、私は征十郎に買って貰ったクレープを頬張っていた。
売店で買ったクレープを私に持って来てくれるその行動まで、王子様がシャンパンを差し出してくれる仕草に見えるのだから、私の頭は赤司病に相当やられているらしかった。

結婚前提の話をするなんて、高1じゃまだ早いなんて言う人がいるかも知れないけど、私達にとっては極々当たり前の話。
だって私は征十郎を愛していて、征十郎も私を愛しているなら当たり前のことだと思わない?


付いてるよ、って言いながら征十郎が私の頬に付いた生クリームを指で救う。あ、そこは口で取って欲しかったな、なんて少女漫画のようなことを思っていたら、征十郎は生クリームの付いた指を再度私の頬にくっ付けて来た。ぺちゃり。



「…え?これは、何?」

「いや、指で取ったのは失敗だなと思って。」

「え?せいじゅ…っきゃ?!」



ぺろり。征十郎が自らつけ直したクリームは、征十郎の舌に舐めとられた。
ぱくぱくと口を開閉している私の頭を、征十郎は見た者の心が洗われるような、ある種の恐怖すら感じるような綺麗な顔で笑い、よしよしと優しく撫でる。



「礼を言うよ。僕のために怒ってくれたこと。」



ああやっぱり、今日はいい日だったんだわ。と、未だにぼーっとする頭で考えた私は、赤くなった顔を、綺麗に笑う征十郎からなんとか隠そうと、目の前のチョコレートがたっぷりかかったクレープにかじりついた。



















続"むしろ愛の確認"


(今日はありがとう、征十郎。)

(楽しかったよ、カンナ。)

(あら?どこに行くの?家はそっちじゃないわよね?)

(ん?ああ。やっぱり、普通に学校に通わせるのは癪だろう?)

(え?)

(僕の大事なカンナを貶めた罰は、やはりちゃんと取って貰わないと。)

(………愉しそうね、征十郎。)



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