「わ、ぁっ!」



入って早々の大水槽のお出迎えにテンションがぐぐーんと上がる。征十郎からの声は無くて、あれ、楽しんでるのって、結局私だけなの?と思って、入場口でお金を払った(私も勿論お金を出そうとしたけど、征十郎に目で黙らさせられた)あと、再び手を繋いだ征十郎の顔をみれば、無言のまま目をキラキラと輝かせていた。
え、なにかしらこの可愛い生き物は。



「せ、征十郎?」

「初めてなんだ…」

「え?何が?」

「水族館、来たの。」

「うそぉ。」



聞けば、子供の頃から、連れて行って貰うのは専ら博物館や美術館らしかった。いくつの時の話なのかと聞けば、4歳かな、と返ってきた。そんな幼児は嫌だ。



「じゃあ、征十郎の初水族館ね。」

「僕は君に初めてを捧げてばかりだな。」

「え。ここでまさかの下ネタ?」

「いや、感動するところ。」

「冗談。」

「…。」

「え、あ、ごめんなさい。」



どうやら征十郎は本気だったらしい。
うん、まぁね。征十郎の童貞貰ったの私だけど。私も処女あげたんだけどさ。

再び征十郎に黙らさせられた私は、それでも、目の前に広がる綺麗な水槽やら魚やら珊瑚やらにテンションは上がったまま、道なりに水族館を歩いて行った。


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