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 青い青い世界に

アルゴスとエリック



頭上には青い空が広がっている。遥か彼方に続く海は、当たり前のように終わりが見えない。
絶えず吹き抜ける気持ちの良い風が、潮の香りをのせてエリックの鼻孔をくすぐった。


「風が重い…」

身体につっかかるような空気の重たさは、勘違いではないだろう。
爽やかな風に似合わぬ空気。何となく。本当に何となくだが、これはひと荒れしそうだ。


「エリック」

ふと、振り向こうとした背後が陰り、聞き慣れた低い声が名前を呼んだ。そこには多くの部下に慕われ、『潮騒の水将』が立っていた。

「アルゴスさん…」
「ひとり甲板で何をしていたんだ?今は休憩時間だろう」

そい言うアルゴスの手には、彼の愛用でもある立派な二丁銃の片割れがある。大方、武器の手入れでもしていたのだろう。

「いえ、少し海を見たくて…」
「海…?海ならいつも見ているだろうが」
「そうなんですが…何と言いますか…」

ただの気分で見ていたエリックは、目を反らして口ごもる。が、それに助け船を出したのは他ならぬアルゴスだった。

「まぁ。分からないでもないがな」
「え?」
「なぁエリック」
「あ、はい」

隣に立ち、海を眺める水将の声が和らぐ。いつになく優しい声色に、エリックの声も高くなる。

「この海は綺麗か?」
「え…」

が、問われたのはずいぶんと突飛な事で、エリックは別の意味で声を高くする。

「えと、いえ…どうでしょう…」
「思ったままを言えば良い」
「あ、と……僕には…綺麗に見えます」
「そうか」

エリックの素直な言葉に、アルゴスが微かに笑みを浮かべる。穏やかな、落ち着く笑みだ。

「アルゴスさん…?」
「エリック、そんな綺麗な海を守る、と言うのはどうだ?」
「この海を…守る?」
「ああ。かつてこの海を支配していたのは我々アクアフォースだ。今一度海を手に入れ、我々の正義で平和を守る。他の国家に何を言われようが、己の正義を貫いて、な」

目を閉じ拳を握りながらそう言うと、アルゴスは静かに軍服を翻した。
エリックが小さく名前を呼ぶのを無視して、逆に口を開く。

「さあエリック、中へ入れ。直に嵐がくるんだろう?」
「あ、はい。……あの…」
「どうした?」
「こんな綺麗な海、僕には守るしかありません。アルゴスさんのような銃ではないけれど、この刃にかけて」

途端、アルゴスの口元が笑んだ。一歩エリックの方へと足を戻し、空いていた片手をエリックの頭の上へ運ぶ。

「ああ。そうだな。お前のその目は好きだ。期待してるぞ士官候補生」
「はい!」



青い青い世界。地平線のその先に、彼らの目指す未来を見据えて、少年は顔を引き締めた。





アクアフォースが封印から解かれた直後の話。
アルゴスのセリフはテーマとか何かから乱用。

イメージが方向を見失った結果。後悔はしてないよ!
アクフォ大好き!




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