Vanguard | ナノ

 act.1-5

( reason for being )




翌日、久しぶりの非番に胸を踊らせる団員たちに気を抜くなとひと声かけてから、ガルモールは赤獅子団の訓練場に顔を出した。
激しい打ち合いを繰り返す者や対魔術の戦法を編み出そうとする者。誰もが意気揚々に活動している中、ガルモールはすぐ近くに立っていたボーマンに声をかけた。

「ボーマン、今少し大丈夫か?」
「ガルモール殿…どうかしましたか?」
「少し街に用ができたんだ。悪いんだけど誰か…そうだな、ガレスとか暇じゃないかな」

申し訳なさそうに笑んだガルモールに、ボーマンはぐるりと辺り見渡してガレスの姿を見つける。ガレスは少し離れてアグラウェイルやハウガンと共に剣技を競っているようで、別に忙しい用も無いだろう。
そう判断して、ボーマンは小さく会釈をするとガレスのところまで行き、幾つか言葉を交わして戻ってきた。

「大丈夫だそうです。すぐに来ると思いますので、少しここでお待ちください」
「ああ、ありがとう」
「いえ」
「なぁボーマン、エイゼルはどこだ?」

姿が見えない団長を探してガルモールが尋ねると、ボーマンは一度声に出して笑ってから答えた。

「エイゼル様なら今頃シャワーを浴びています」
「シャワー?」
「はい。昨夜、訓練を遅くまでやって、そのまま寝てしまったようです」
「そう。…まったく、エイゼルっぽいなぁ」

相変わらずだな、と苦笑いを浮かべたガルモールを、ボーマンは単純に微笑ましいと思った。ガルモールがエイゼルを大切に想うその気持ちは、とても綺麗だ。

それからしばらくしない内にガレスが二人のもとへ来ると、ボーマンは再び小さな会釈をしてからガルモールから離れた。
エイゼルは良い部下を持ったなとしみじみ思いながら、ガルモールはありがとうとだけ告げた。






( それが彼の存在理由 )




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