Vanguard | ナノ

 誰よりも想うなら


ハロウィン小説。
絶対正義の海軍の場合A

>>バシル×ディアマンテス




秩序と正義を掲げるアクアフォースは、メガラニカ周辺の巡回を欠かさない。バミューダ△のライブ会場付近では大変な混雑が混乱を呼び、グランブルー海賊団は神出鬼没で出没する時間と日にちを選ばない。
いろんな意味で騒がしいメガラニカは、海軍の掲げる秩序に反する時が多々あるのだ。
それ今日も例外に漏れず、ストームライダーを中心に巡回をしていたわけだが…。崖の下から続く階段を登り終えて、バシルは首に巻いていた布を緩めた。
部下を率いて巡回をするはずの大佐がいなくなったのはつい先ほどのことだった。いつものことすぎてバシルにはもう慣れたものだったのだが、慌てる部下をそのままにしておくわけにもいかずに、バシルはベネティクトに「いつものディアマンテス大佐失踪」と言う短い伝令を出し、その場をエウゲンに任せた。
伊達に常々あの気まぐれでヘタレな大佐と一緒に行動しているわけではない。ディアマンテスが行きそうな場所には目星はついていた。無駄に急で長い階段を登り終えれば、そこには多数の人で賑わいを見せる市場がある。
ここはディアマンテスがよく来る場所でここがどの国家なのか、バシルは知らなかった。ただ様々な種族が共存するこの場所を、あの大佐が気に入ってることだけは記憶に鮮明に残っていた。

本来苦手な雑踏を縫うように歩いて、この場では目立つであろう白軍服を探す。
すると案の定、その姿はすぐに見つかった。

「大佐」

後ろからいつものように声をかければディアマンテスはゆっくりと振り向いて口元に笑みを浮かべた。

「ああバシル君。よくここだって分かったね」
「そりゃあ…今までにもここに来たときは何回かありますからね」

何でもないことのようにバシルがさらりと答えれば、ディアマンテスは困ったような微笑みを見せてから再び手元に目を移した。
つられてバシルも視線を落とせば、そこには軍服を着た男が(女だったら良いと言うわけでもないが)持つにはずいぶん可愛いお面があった。

「大佐…何ですか、それ」

思わずバシルが尋ねると、ディアマンテスはパッと顔を明るくしてそのお面をつけてみるような仕草をして言った「知ってたかいバシル君、今日は世間一般はハロウィンだってこと」
「ハロウィン…ああ、確かベネティクト大佐も言ってましたねそんなことを…」
「もともとは収穫祭だったらしいけどね。今は悪戯するかお菓子もらうかになっちゃって…」
「あ、その豆知識とかどうでもいいので帰りましょう」

話が長くなりそうな上司を遮って、バシルはその場から背を向ける。が、それすらも気にする様子のないディアマンテスは首に巻いてある布を後ろに引っ張った。

「あ、ちょっと待ってよバシル君」
「何ですか」
「ちょっとこれ買って行かなきゃいけないから」
「え…買うんですか?」
「うん。テオ君に」

テオ、とディアマンテスから出た名前を呟いて、バシルは無愛想なティアーナイトの兵長を思い出す。

「何でまた…」
「テオ君がアルゴス君に何か悪戯したいって言うからさ」
「大佐が買うんですか?」
「可愛い部下だからね」
「だからっていちいち大佐が買わなくても…」

そこまで口を開いて、バシルは咄嗟に口を噤んだ。

「バシル君?」

そんなバシルを変に思ったのか、ディアマンテスが顔を覗きこむようにして名前を呼んだ。

「どうかしたのかい?」

そう尋ねてくる上司に、貴方のせいだと言いそうになるのを我慢してバシルはその腕を掴んだ。

「うわ、ちょっとバシル君?」
「良いから来てください」

手に持っていたカボチャのお面は、ディアマンテスが空気を読んで棚に返す。半ば強引にバシルにひっぱられながら、ディアマンテスはその背を追いかけた。
やがて人の姿が見えなくなると、バシルは足を止めてディアマンテスを正面から見た。

「大佐、さっきのお面なら後で誰かに買いに行かせます」
「ああ、うん。別に構わないけど…」
「Trick or treat」
「え?」
「それが目的でしょう、大佐」

涼しい顔してよくやる、とバシルは文句を言いそうな口をきゅ、と引き結ぶ。
巡回の途中で消えれば必ずバシルが探しに来る。そして見事見つけてくれる彼に何気なく本題を出して、さらに別の人の話をする。

「いちいち巧妙ですね」
「はは、でもバシル君はひっかかってくれたじゃないか」
「あの店からは私の意思です」

へらりとした笑みを浮かべる大佐を恨めしく思いながら、バシルは掴んでいた腕を引いて顔を近付けた。

「お菓子、くれないんですか?」
「生憎とまだ買ってなかったから…」

言葉の終わりを待たずに、バシルは食えない上司の両頬を挟んで唇を合わせた。
今まで余裕しか見せていなかったのにこういうことになると臆病になるのか、なかなか口を開かないのが焦れったくて、バシルは舌でそれをこじ開ける。

「っ、ん」

突然の侵入に驚いたのか、ディアマンテスがぎゅっと目を閉じて頬を挟むバシルの手を上から掴んで引き剥がそうとした。が、バシルはそれすら許そうとせずに逃げる舌を絡め取った。

「や、めっ、バシル…!」

やがて酸素が足りなくなったのか、ディアマンテスがバシルの胸を押し返す。顔を反らして細かい息を繰り返す上司を素直に離すでもなく、バシルは淡々と言葉を告いだ。

「大佐…今度はもっと素直に誘ってみてくださいよ」
「気が…向いたらね…」

またそうやってはぐらかす、呟こうとしてバシルは口を噤み、代わりに早く帰ろうと再び腕を引っ張った。





(母艦に帰ったらあります?)
(ん?何が?)
(お菓子です)
(ああ、あるよ。一緒に食べるかい?)
(ぜひ)




何これ題名関係ない






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