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 名もない感情を持て余す


テオ→(←)アルゴス
テオくんが果てしなくコミュ障。
当たり前のようにキャラ崩壊。







一日に五人の人と話せば良い方。十人なんてまったく比じゃない。

俺はそれくらい人と話すのが嫌いで、あわよくば人となんか話す機会が一度もなければ、とさえ思う。
例えばひたすらに強さを求めて一日中稽古ができたらどれだけ嬉しいだろう。多少話さないといけないとは言え、強くなるためならまだ妥協できる。

ともあれ、俺が言いたいのはどんな理由があろうと人と話すのは嫌いだ、と言うこと。

だから、今のこの状況は大いに不愉快だ。





仏頂面。

真っ先にそう思った。人のことはまったくもって言えないけど。とりあえず酷い顔だと、思わず言いそうになって口を噤んだ。

「おいテオ、今の話聞いていたか」
「あ、はい?」
「…聞いてなかったな」
「はい」
「………」

もはやいつも通りになってしまったやりとりを展開して、目の前の上司はため息を盛大に吐いた。いつも通りなのに、この人もよくやるよ。
「だってアルゴスさん、俺は話すのが嫌いなんですよ?」
「…だからそれがどうした」
「だから無視するのだって仕方ないんですよ」
「駄目だな。まったく理由になってない」
「なってるじゃないですか。人と話したくないからあの人のことも無視した。これ以上立派な理由がありますか」

俺のその一言に、アルゴスさんがまたため息を吐く。今度は、もう諦めたような仕方ないと妥協するような顔だ。
もうこのまま諦めてくれればとも、もう少し気にしてくれればとも思う。
俺のコミュニケーション障害には、大半の人が諦めた。いちいち口やかましく…ああいや、気にとめて注意してくる人も、最近では格段に減った。
それでもこの人が毎回俺に注意してくるのはどうしてだろう…。

再び顔を上げて何事かを話す上司を無視して、その顔を凝視する。
“かっこいい”の部類に入るだろうその顔も、今は眉間に皺が寄って台無し(ほぼ俺のせい)になっている。

「だからテオ、お前は…」
「アルゴスさんて俺のこと好きなんですか?」
「……は?」

ようやくたどり着いた答えに、上司はものすごいアホ面を見せたあと、ものすごい力で俺の頭を殴った。




(図星ですか)
(ちっ、違う!と言うか何でそんな考えに至ったんだアホ!)
(…直感で)




アルゴスさんは無自覚なだけ。





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