小説 | ナノ


一生かけて、口説き落としてあげるから



プリズムキングカップが終わった。
我々シュワルツローズからキングは排出されず、総帥は崩れ落ちた。
「……暇だなあ。」
アレクも修行に出ちゃったし、Theシャッフルの皆は仕事だし…
ルヰは……

「入るよ」


シュワルツローズの寮の最上階。
東京タワーより高く、されど日の差し込むこの部屋で、その日差しを享受しながらキングサイズのベッドに横たわる姿があった。

「……なまえ」
「暇だから来ちゃった」
「最近、そればっかり」
ふふ、と力なく笑うルヰはキングカップ以来体調を崩したままだ。
医者にも診てもらったけれど、原因は不明。
「だって法月さんも忙しくて練習付き合ってくれないし…」
法月さんはあの日以降、また新たな団体の設立の為動き出した。
彼の闘志が消えていないことだけが、シュワロツローズ生の心の在り処でもある。

「……。」
「熱、下がらないね」
「うん…。」
ルヰは熱に浮かされているのか、時々どこか遠くを見つめる。
辛いのかと思って話すのを止めると、彼の眼はなぜか寂しそうに揺れる。

私の腰かけたベッドが小さくきしんだ。
「ね、ルヰ」
「なに?」
「ゲームしよう」
「……?」
力のない琥珀が、不思議そうに瞬いた。
「私がルヰの事口説くから、私の事を好きになったら負けね」
「なまえって、馬鹿だよね」
「そんなことないよ!?」
「ふふ…いいよ。どんな風に口説いてくれるの?」
「えっ…と、……好き」
「地味」
「一言で確実に傷つけようとしてるのが分かる!!!」
何も考えずに発言した自分も自分だけれど!
「こうするんだよ」

私の後頭部にほんのりと熱い手をまわして引き寄せる。
艶のある唇が、耳に近づいた。
「好、き。」


「……いまのセーフ?」
「どうだろうね」
クスクスと笑った彼は少しでも元気を取り戻してくれただろうか。
熱が、少しだけ私の耳にうつった気がした。
…きっとこのゲーム、一生かかっても終わらないだろうなあ。
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診断メーカーより

如月ルヰへのお題は『一生かけて、口説き落としてあげるから』です。