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ドッキリ企画




「High×Jokerの〜!?」
「315!ドッキリ生放送ー!」
「イッイェーイ!」
都内某所の住宅街。まだ昼前時ということもあって人通りは少ない。
そんな中、生真面目な出で立ちの少年が手元の台本を読む。
「この企画は、315プロダクションの個性豊かな面々にドッキリを仕掛け、新たな魅力を引き出すという企画です。」
「…ジュン、今日の…相手は…?」
実はこの番組、レギュラーメンバーにもギリギリまで出演者は発表されないようになっている。出演者を発表するのは大抵台本を正確に読める彼だが、相手によって苦い顔をしたり渋い顔をしたりと意外に豊かな表情を見せることで番組の見どころの一つでもある。
「今日は……えっ。」
台本を手にしていた彼が、ピシリ、と効果音をつけられそうな程に強張った顔のまま動きが止まった。
「ジュン?」
「おーい、大丈夫か?」
「誰だったんすかー…って、え“っ」
「……プロ…?」
「「…プロデューサー!?」」


「…というわけで今日は特別編!俺たちのプロデューサーちゃんのおうちにお邪魔しちゃいますっすよー!」
「はぁ…迷惑にならないと良いんですが」
「今日、プロデューサーってオフなんだろ?そもそも家にいるのか?」
「確かに!いつも忙しそうだよな」
「…あ、着いた…みたい」
「普通のマンションっすね」
「ほら、一般の方の邪魔になる前に入りますよ」

ピンポーン
「あっなんで鳴らしちゃうんだよシキ!」
「えっ」「あっ」
「ドッキリの意味、わかってるんですか!?」
バタバタバタ…
「今出まー……はっ!?」
「わ、プロデューサーちゃん………」
「あ」
「え…っ」
現れたのは普段のスーツ姿とは似ても似つかぬ、乱れたパジャマ姿のプロデューサーだった。
慌てて出てきたのか息が切れている上、大きく開いた首元には赤い花が点在している。
互いが互いを見つめ唖然としていると、部屋の奥からぺたぺたと軽い足音が聞こえてきた。
「石川さん、どうしたの…?」
プロデューサーと同じく衣服の乱れた女性は、目元を擦り欠伸を一つすると、プロデューサーと四季を交互に見て、首を傾げた。
プロデューサーの顔が青ざめる。
「っすみません出直させてください!!」
プロデューサーは女性を抱きかかえると、直ぐにドアを閉めた。
…ドア越しに、耳慣れた説教の時の声がする。

「お……大人ってすげー…」
「…隼人はちょっと黙っててください」