小説 | ナノ


明日へ繋げる約束を




『俺と結婚してください!』
『…っ喜んで!』
…初めて、サプライズプロポーズと言うものを見てしまった。
夜の遊園地。お城の前で跪いて指輪を差し出す男性は真っ赤な顔で、それを受け取った女性は最高に幸せそうで。
…来年のウェディング雑誌の仕事に活かせないかな…。
ベンチに座り、メモを取り出そうと懐を弄る。

「こら」
「わっ!?」
ヒヤリと首筋に冷たい感覚。慌てて顔を上げれば彼…恭二がフッと笑った。離れて行く手を見て、冷たいものの正体が彼の手だと漸く気づく。
「また仕事のこと考えてただろ。今日はデートの事だけ考えてれば良いのに。」
「ごめんね、つい癖で」
「まあ、あんたらしいけどな。…さっきの、サプライズって言うんだったか?」
「うん、ああいうのも素敵だなって」
去年はBeitとLegendersだったし、今年は誰がいいかな…サプライズプロポーズを取り入れるとしたら…。
「へえ、あんたもサプライズ好きなんだな」
「…うん?」
「なら良かった」

「……え」
突然、恭二が目の前で跪いた。
オッドアイが、私を真っ直ぐに見据える。
心臓が跳ねる。

「絶対あんたを幸せにする。だから…俺と、結婚してくれ」
彼の手元で開いたロイヤルブルーの小箱の中には、エンゲージリングが星のように煌めいていた。