小説 | ナノ


春はすぐそこ



「ふわぁぁあ〜…!」
十二月の末。寮のでみんなとのクリスマスパーティーもつつがなく終わり、ミナトさんが年越しそばやおせち料理に力を入れだす、そんな時期。
帰省ラッシュで人も少なくなった寮の食堂では、レオくんが録画した音楽番組を見ている。彼は今大人気のThe シャッフルに釘付けで、キラキラとその大きな瞳を輝かせていた。

「レオくんはThe シャッフル好きだねー」
「はいっ!すっごーくかっこいいです!」
「ふーん…?どこがかっこいいと思う?」
顔は良いけど、私はやっぱりシュワルツローズよりエーデルローズの方が良いなと思う。
あんまりいい噂も聞かないし…
「…あの人たちはいっぱい努力してるんです。厳しくても苦しくても、諦めないでトップを目指してる…それってすごくかっこいいと思うんです」
「へえ…。」
…レオくんはシュワルツローズの練習を見たことがあるんだっけ。なんか、ミーハーだと思てたから、意外かも。
「……そういえば、レオくんは帰省しないの?」
「はい!今年はこっちにいることにしたんです」
「どこか行くの?」
「それはこれから誘おうと思ってて…」
「ふうん?」
ユキさんかな?二人でどこに行くんだろう。初詣は皆で行くし、福袋とかかなー。

「お正月、一緒にお買い物行きませんか?」
「え…私?」
「ダメですか…?」
「えっ!?いいよ!行く!」
だからそんなしゅんとした顔しないで…!女子顔負けの上目遣いに罪悪感がつのる。
「やったあ!約束ですよっ」
「うん」
私と福袋買いに行きたいからわざわざ帰省やめたのか。レオくんってかわいいなあ。早速スキップしながら自室へと向かう彼を、紅茶を口に運びながら見送る。

「…あ!なまえちゃん」
不意にレオくんが振り向く。
「デート、ですからね?」
「……!?」
前言撤回、やっぱり彼は男の子です。