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いよいよこの日がやってきた。
二学期も半ばを過ぎ、大方の学校行事も終わってしまった頃。暇を持て余しているクラスに、今日は転入生が来るのだ。それにはいさな達のクラスだけではなく、学校中が注目している。
クラスでは転入生が入る前から、色々と噂が立っていた。転入生は外国人で、青い髪で金の瞳を持ち、背が高く、しかも格好いいらしい。
こうなると黙っていないのが女子。何を考えているのか知らないが、殆どがめかし込んでいる。男子はそんな女子達を冷やかし、かなり残念そうにしているが。
クラスメート達の様子を見て、いさなは一人気分を落ち込ませた。
これでもし、自分がその転入生と住んでいるなどと知られたら、きっとクラス全体、学年や学校全体で騒がれ、色々と言われかねない。ただでさえ転入前からこんなに騒がれているのに、これ以上は堪忍だ。
でも、諦める、か――いさなは静かに腹を括り、後の事は考えないよう努めた。
明はそんないさなの心境を知ってか知らずか、計画の成功を秘かに確信していた。
そんな中、サリアといえば担任と共に職員室から教室に向かって廊下を歩いていた。
サリアが通る度に、廊下や教室から身を乗り出している生徒達が騒いだ。彼からしてみればそれは当たり前の事。
学校も中々悪くないな、と心の中で呟いた。
気付くと担任が教室の前で止まっており、「此処がそうなんだな」と理解。先ずは担任が入り、その後呼ばれてサリアが入る。
彼が扉を開くと、すぐさま歓喜の声が沸く。先程まで不満を募らせていた男子までもが、サリアの醸し出す雰囲気に驚いた。担任はその声を何とか静め、サリアに簡単な自己紹介をさせた。
「今日から此処に入る事になった、サリアです。よろしく」
クラス中が伸びやかなサリアの声にまた沸いた。しかし、それは次の担任の言葉で、不満の声へと変わる。
「えー、サリア君はとある事情により、篁さんの家でサリア君の妹さんと一緒に暮らしています」
親戚と言う言い訳には無理があると思った為、そこは複雑な事情としておいた。が、生徒たちの反応を見る限り、それでも大して変わらない気がした。
男女共に、いさなと明以外が瞬間凍り付き、数秒も経たない内にそれはブーイングもどきの嵐となった。クラスメート達が次々といさなの周りに集まる。いさなはその雰囲気に圧倒され、涙が溢れそうになった。
担任は、いちいち騒ぐ生徒達を一喝し黙らせ、事もなげに話を進めた。それでも生徒達は、執拗にいさなの方へとまだ視線を寄せていた。担任はサリアに、いさなの隣へ座る様に言った。またもやブーイングが起こったが、担任の冷笑と一睨みで、皆黙り込んだ。
――果たして本当に明の先見は当たるのか。それには長い時間がかかりそうだ。