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「・・・・・・・、」
ゴン、としゃがんだまま水道の縁に頭をぶつけて溜息をまた一つ。
今日これで何回目かな、・・・三回?
「・・・・・・集中、できない」
はぁ、とまた一つ溜息が出た。うわ、止め止め。今は休憩といっても部活。・・・そうだ、考えるな。
「みょうじ」
「!木ノ瀬・・・どうしたの?」
顔を覆っていたタオルを退かせば、やはりそこには木ノ瀬がいた。
「なんか、集中できてないみたいだったから?独り言が出るくらいに。」
「うわっ聞いてたの?」
「人聞きの悪いこと言わないでくれる?たまたま大きな独り言が耳に入っちゃっただけだよ」
「う、そんな大きかったかなぁ・・・・ごめん、ちょっと悩み事で。
休憩終わったらすぐ集中するから」
「・・・・・・・何があったの」
「へ、!?いひゃっ!」
ぐいっと右頬を引っ張られ、少し睨めば面白い顔、と笑われた。
く、くそう・・・・!
「・・・・・ちょ、ちょっひょ、
・・・・しゃべえないから一回はなひて?」
「・・・・・・わかった」
渋々木ノ瀬が離してくれた頬をさすった。
うおあ、結構痛かったー・・・
「で?何なの?」
「・・・・・進路のことで、ちょっと」
「なるほどね。・・・やりたいこととかあるの?」
「それが・・・こう、ハッキリしたものがなくてですね・・
できれば星をずっと見ていたいんだけど」
「・・・・ぼんやりはある訳?」
「・・・・一、応・・・うん」
「それ、調べた?」
「?え、」
「それか陽日先生に相談してみなよ。いい職業ないか。」
「前、中学の時に調べたんだけど・・・ちょっと難しそうだったの。成績的な問題で」
「それで諦めちゃう訳?」
痛い所突くなー・・・
何でだろ。本当はわかってるんじゃないの?
だったら・・・私、マヌケっていうか痛い奴っていうか・・・ははー。
「・・・・本当は、まだ諦めきれてない、よ。」
・・・あーあ、つい言っちゃった。
だって、何だか木ノ瀬って落ち着くというか、何ていうか・・・。うん、まぁ取り合えず仕方ない。
「・・だからほぼ付きっきりで木ノ瀬に勉強教えてもらってたりするんだよねー、いつもごめんね?」
あはは、と笑ってみても、木ノ瀬の顔は変わらない。
実は木ノ瀬のこの瞳、苦手だ。何もかも見透かのがされてるみたいで、いつか呑まれちゃうんじゃないかってぐらい真っ直ぐで。
きっと、それは性格に比例してるのかななんて思ってしまう
「みょうじ、無理に笑わなくていいよ」
「、」
「諦めきれない、でいいだろ。
何を恥ずかしがる必要があるの?むしろ自分の目標はしっかり意思表示しときなよ。」
ストンと真っ直ぐに言葉が心に入る。的中、といった所だろうか?いつも木ノ瀬の言葉は真っ直ぐでたまにぐさりと来るけれど、でも、
「ありがとう、木ノ瀬」
「・・・・別に。ただ、みょうじがそんな事で諦めるなんてらしくないなって思っただけ。」
「・・・え、とそれは、私は諦めが悪い、と?」
「想像に任せる」
「ええ・・・。・・・・あ、木ノ瀬は諦め悪そうだよねー、ギリギリまで自分が欲しいものは手に入れようとしそう」
「・・・・普通でしょ。自分が欲しいものだったら」
「・・・・・・そう、」
どこか自信ありげにニコリと笑った木ノ瀬に、不覚にも少しだけカッコイイなと思ったのは私だけの秘密。
(欲しいものは、欲しいと意思表示しなければ。)
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