一歳 | ナノ
「白鳥くん、宮地君、いつもごめんね?私のせいで待たせちゃって・・・」
「気にするな」
「そうだぞー犬飼が遅いせいだから大丈夫だってー気にすんな!」

食堂で私、白鳥くん、宮地君の順番で椅子に座り私のお昼ご飯のパンを買ってきてくれている犬飼君を三人で待つ。これは最近日課となってきている風景だ。私と犬飼君が・・・おっお付き合いをする前、は宮地君や白鳥君、それから今は生徒会の集まりでいないけど颯斗君も混んでいて危ないからと当番制で私の昼食をあの混んでいる中取ってきてもらっていた。
最初、悪いからと全力で断ったけど、私が三年生にちょっかいを掛けられているのを見てたらしく、大人しくしてろとお叱りに近い忠告をもらってしまった。とくに颯斗君と宮地君が怖くて私は頷くしかなかったのだ。

「だーれのせいだって?白鳥ぃー」
「ぐえっ!首っしまっでる・・・!!」
「犬飼君!お帰りなさい」

おう、これでよかったかと私にクリーム系のパンを差し出す犬飼君にいつもありがとうとお礼を言うとどーいたしましてと私の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜるように撫でた。止めてと犬飼君の手を掴んでちらりと上を向くと犬飼君は口の端をニィッと悪戯っぽく笑っていた。場違いなのは、わかってる。わかってるけど・・・不覚にもときめいてしまった。

「おいそこー!!変に甘い空気出すな!」
「はぁ?」
「!?」

白鳥君の言葉に自然と顔に熱が集まるのがわかる。顔を隠す為にすぐに下を向いたから、多分バレてないとは思う、けど・・・

「白鳥、やかましいぞ」
「そうだぞ早く席につけよ」
「あー!何先に食べ始めてんだよお前らあ!みょうじを見習えー!」

なんとか熱も下がってきた気がしたので顔を上げて食べよっかと白鳥君に言えば元気良く返事をしてくれた
最初は部活の話だったんだけどそこから月子ちゃんの話になり、月子ちゃんから何故か星の話へと発展した。やっぱりどうしても私を含めてこの学校の人は星が大好きだから、あまり不思議ではないのかもしれないけど。

「この前月子ちゃん達と天体観測したんだけどね、・・・・犬飼くん、あの携帯さっきから鳴ってるけど・・・」
「いや、気にするな」

そうは言っても・・・そういえば朝からずっと犬飼くん携帯いじってたような・・・
ていうかご飯食べ始める前から結構鳴ってたような・・・気がするんだけど。

「犬飼くん、気にしなくて大丈夫だよ?こんなに鳴るってことは出た方いいと・・・思う。」
「・・・・・、わーったよ・・電話だからちょっと俺席外すな?」
「うん、わかった。いってらっしゃい」

白鳥君と一緒に手を振って、いざ月子ちゃん達の話をしようと宮地君と白鳥君の方を見ると宮地君がもうおやつに近いご飯を食べ終わっていた。

「相変わらず早いね、羨ましい」
「そうか?」

まだ足りないとボソッと宮地君が言うので少し笑ってしまった。だってなんだか可愛い。白鳥君もニヤニヤし出して宮地君をからかうので宮地君はついに怒ってしまった。それを宥めながら犬飼くんまだかなぁと私はもう一度犬飼くんが行った方を見た。


************


「なまえさん、次は移動教室ですよ」
「うん、行こっか。犬飼くん、は」

ちらりと廊下にいる犬飼くんを見ればまだ電話中だった。

「行きましょうか?」
「うん」

ここ最近ずっと犬飼君は授業が終わると誰かと電話をしている。聞くところによると中学の同級生かららしい。
すごく長い電話みたいだし、頻繁に犬飼くんの同級生の、お友達さん?は掛けてるみたいだからきっと大事な電話なんだろうと思い、私と颯斗くんは最近犬飼くんに軽く声を掛けて移動先へと向かう形になっている。

「・・・・犬飼くん、大丈夫かな?」
「心配いりませんよ。ですが・・・もし気になるようなら犬飼くんに聞いてみてはどうでしょうか?」
「・・・・大事な話かもしれない、し私が口を挟んでいいことじゃないと思うんだ。だって、犬飼くんのお友達の事知らないし・・・」

だから聞くのは駄目だと思う。そう言えば気にしすぎですよ大丈夫ですと颯斗くんは私を安心させるように笑った。

「貴方は犬飼くんの彼女なんですよ。彼女を心配させる犬飼くんが悪いです。
だから、なまえさんは悪いと感じる必要はありません」
「・・・・・そ、そういうものなの?」

お昼の時にでも聞いてみたらどうでしょうかと颯斗くんが言った直後に後ろから聞き覚えの有る声が聞こえた。犬飼くんだ。

「わりぃ。長引いちまって」
「ううん、大丈夫?」
「あー・・・まぁ。」

歯切れの悪い返答を聞く限りだとどうやらまだその問題?は片付いてないみたいだ

「では犬飼くんも追いついたことですし行きましょうか」
「・・・・うん、そうだね。」
「おー」

**********


「・・・・、・・・」

結局その後のお昼休みは聞けなかった。だって颯斗くんはともかく白鳥君や宮地君だっているし、そんな中呼び出すなんてことも私には出来ないし・・・・・・き、気のせいかな。颯斗くんの、視線がなんだか痛いような・・・

「きりーつ、礼ー」

帰りのチャイムが鳴って皆席を立つ。犬飼くんを見ると机から教科書を出していた


「い、犬飼、くん!!」
「おわっ・・・どうした?」

犬飼くんの元に行き呼べば少しびっくりしながら私を見た。・・・・なんて、言えばいいんだろう。最近電話してる人、どんな人なの?なんかトラブル?大丈夫?・・・何から、言えば


「・・・みょうじ?」


ブー・・・ブー・・ブー・・・


「!、あ、・・・・出て、いいよ」
「・・・・いや、どうせ中島奈々だし」
「・・・なかじまさん?中学の同級生?」

あぁ、ちょっとな、そう言って犬飼くんはそんなことよりどうした?と私の答えを促した。答えはもう半分出た。中学の同級生の女の子。少し犬飼くんが困った顔をしたから何か問題が起きてるんだろう。私が、言えることは

「早く、解決するといいね」

何で、こんなに思考と胸がもやもやずきずきしてるのとか、わからない程私は鈍くないし子供じゃない。ちゃんとわかってるつもりだ。これが俗に言う───

「おう、さんきゅーな。そんじゃ、また明日」

待って、行かないでなんて言葉が口から零れそうになってなんて図々しいんだろうと自分を疑った。


「・・・うん、バイバイ」


笑えてるかな、私は。笑えてたらいいな犬飼くんの前で酷い顔はしたくない。
それにしても恋愛自体が初めてだからこんな感情も初めてだ。漫画だけかと思ってた・・・いやでも知り合いに女の子がいるなんて当たり前じゃないかなのにこんな事で私は、

「なまえさん?」
「・・・・、・・」
「・・・・大丈夫ですか、なまえさん」
「・・・・・な、何が?どうしたの颯斗君」

あぁ、顔上げられない。こんな顔誰にも見せられないよ。私心狭いな、何で女の子の知り合いがいるってだけでこんなに悲しくなってるんだろう。・・・・いや、違う

「あ、の私、図書室で調べものあるから、じゃあね、また明日!」
「あっちょっと!」


そんなこと言ったら、月子ちゃんは?月子ちゃんはどうなるの──?

私は、知り合いの女の子がいることに嫉妬してるんじゃなくて知らない女の子が私が知らない犬飼くんを知っている事実が嫌なんだ。いやまぁどちらにせよ心が狭い事になる。こんなの誰にも知られたくない、恥ずかしい、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしすぎる・・・!


バタン!


「───っ・・・!!」


自室に着いてベッドにうなだれるように上半身だけ預ければ声にならない叫びが出た。こんなの、誰にも知られたくない。こんなにも心が狭いだなんて知らなかったし、まさかこんなにも取り乱すなんて聞く前は予想もしてなかった


「な、情けない・・・!」


誰かに聞いてほしいのに話したくない。こんな事話せる人いないよ。誉君にだって話せない
何か、気を紛らわさなきゃやっていけない。でもこんなぐちゃぐちゃな頭で何をすればいいのだろうか。

「・・・・明日、」

明日、私は犬飼くんにちゃんと笑いかけられるかな。それが心配だ。


*********


私は少し寝てから屋上庭園へとやってきた。うん、今日も星がよく見える。ここの景色がすごく好きだ。夕方も、朝も、昼も。雨の日だって、いつでもここは綺麗だ。一人で出歩くなと皆は言うけれども、私は月子ちゃんみたいに可愛いということもないしあまり一人になっても声を掛けられたりはないから全然大丈夫なのに皆私が断るとか出来なさそうとか思ってるのか私をすごく心配する。トイレに行こうとしただけで心配された時は流石に恥ずかしかった

「皆、優しいなぁ」

優しい。とくに月子ちゃんは。月子ちゃんは私を優しいと言うけれど、そんなことは絶対ないんだ。月子ちゃんが優しいから皆月子ちゃんに優しくしたくなっちゃうんだよ。私もその一人だし、月子ちゃんが好きだって言ってくれるから月子ちゃんの前では優しい子でいたいんだと思う。私、性格悪い。

「・・・・・」

星がきらきらと輝きを放ってその近くにお月様。綺麗だなぁ・・・星を好きにならなかったら、私は変われてなかった。他に好きなものなんてなかったかもしれないし、友達だってきっと少なかった。星は、私を救ってくれた。だけど今日の星は何だか、滲んで・・・・

「みょうじ?」

あぁ、泣いてるんだと自覚して、下を向いた瞬間だった。あぁ、この声は知っている。大好きで、大好きで、仕方がない、この人がいなかったら私は───
そう思ったらぽたりと涙は零れ落ちてしまった
あぁ、しまった。やってしまったと思えばそれはまたポロポロと零れ落ちて音を立てて地面のタイルに染み込んだ


「・・・・どうした?」


ぐしゃっと頭を撫でる手が好き。この人は私にとって星と同等の存在だ。でも、この人は星と違って、いつでも待ってくれる。私が、ちゃんと言葉にするまで待ってくれる。仕方ないって、眉を片方下げてギザギザの歯が見せながら笑うから、


「聞いて、ほしいことがあるの、」


受け止めてくれる彼は、私を、幻滅するだろうか?いや、彼は私が間違っていたら正してくれる。絶対、離れていかないで待っててくれるから、知ってるから。だから、嫌われるとか、恥ずかしいとか、もうそれは置いといて、どうか叱ってほしい。だから、とにかく、


「離れていかないで」


口から零れたのは、一番欲する願いだった。

    

    愛 し さ に ふ る え て い る


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裏話で中島さんの件は中島さんが宮地に一目惚れして会わせろ会わせろしつこかっただけだという感じです。これは、切甘になっているのでしょうか・・・本当にすみません・・・!フリリク参加ありがとうございました。梗弥様に捧げます!
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