「みょうじー学食に行こー」 「うん」
お財布を持つ西瓜くんに返事をして私も急いでバックを持った。男の子はお財布だけでいいかもしれないけど、女子はそうもいかない。ポーチとか櫛とか色々ある。幸い私はメイクをしないからそんなに持ってくるものはないけれど。
「入学式に出された課題終わった?」 「まだ終わってない、英語は終わったけどそれ以外は俺まだ手ぇ付けてないや」 「そっか、」
西瓜くんにまだ英語がわからなくて終わってないんだと言えば俺は数学が全然わからないから今度一緒にやろうと言ってくれた。ありがとうと返せばこちらこそよろしく首席さんと笑った。プッ、プレッシャー・・・・
「みょうじは何たべんの?」 「今日はパンにしようと思って、」
こうして話してても、やはり視線が気になってしまう。夜久先輩は学食にはあまり行かず、幼なじみと一緒にお弁当を食べているようだ。視線が気になっての行動かはわからないが賢いと思う。お弁当、作りたいけど一体どこで作ればいいんだろう。一応部屋にキッチンはあるけれどフライパンとかはない。今度買いに行こうか・・・この際食堂のおばさんに頼んでみようかな、貸してくださいって
「おばちゃーんしし座定食ー」 「焼きそばパンと、クリームパンください」 「はいよー、パンは260円ねー」
お財布から260円丁度出してパンを受け取った。飲み物は朝買ったものがあるから大丈夫だ。
「ちょっと待っててな」 「うん」
端っこの方で大人しく待った。西瓜くんは女子一人で居させるわけにはいかないと思っているらしく、私を一人にはあまりさせない。たしかに男子生徒からの視線に一人で耐えるのは辛いのでありがたいけれども、申し訳ない。
「そういえばみょうじって知り合いとかいんの?たとえば中学からのとかさ。」
席をなんとか確保して私は焼きそばパン、西瓜くんはお肉を食べてる時だった。中学からの・・・というより、
「小中一緒の子が一人いるよ。」 「おーそっか。朝一緒に登校してる奴か?」 「うん、そうだよ」 「はー・・・なんか、すごく目立つ奴だよな」 「あー・・・うん、ちなみに前髪は事故らしいよ?なんか木ノ瀬の、あっ名字が木ノ瀬っていうんだけど、その従兄弟がなんか機械?できっちゃったみたい」
念の為木ノ瀬が奇抜な奴ではないという事を説明しとく。あの前髪は流石に可哀想だから。
「へー綺麗な顔してるよなー木ノ瀬って。モテるだろー」 「うーん、そうだね」
木ノ瀬の隣を歩くと、周りの視線が気になってしまうことが多い。私は元々あまり目立つタイプではなく、影が薄いから木ノ瀬の隣にいると引き立て役になるのだ。西瓜くんはそういう意味で言ったんじゃないんだろうけど、なんであんな奴といるんだって言う言葉は中学や小学校で散々聞いたから、そろそろ慣れないといけないのたけど、どうしても敏感になってしまう。 目立たない私の存在を西瓜くんが気づいて声を掛けたりしてくれているのは私が女子なのもあるけれど、気を使ってくれているからだと思う。複雑だけど、いつかそういうのを気にしないで、仲のいい、ちゃんとした友達の関係になれたらいいなと思ってしまう。忘れられるのはやっぱりちょっと悲しいけれど、こうやって気を使われるのは嬉しい反面、申し訳なく感じるから、あまり気を使われるといつか何を話していいかわからなくなりそうだ。
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「みょうじー呼んでるぞー」 「!、ありがとう。誰・・・が、」
教室に戻って西瓜くんと今日の授業の復習をしてたらクラスの、・・・まだ、名前がわからないけど、男の子が私を呼んだ。誰かが私を呼んでいると言うので目をそちらに寄越せば見知った顔が。
「き・・のせ?どうしたの?」
西瓜くんに断りを入れて木ノ瀬に近づけば携帯見た?とスマフォを片手に言った。
「・・・・見てない、かも」 「そう、こまめに見なよ携帯は。それと、芭月、QRコード教えてよ」 「QRコード?」
私が使っているメール機能がタダで出来る有名なアプリかと思い、聞けばやはりその通りだった。わかった、あとでQRコード送っとくと言えば忘れるなよと最後に念を押された。うん、と素直に傾けばそれじゃあと去っていく。・・・一体何だったんだろう。携帯を見れば分かるのだろうか? 携帯をポケットから取り出して起動し、パスワードを打つ。メールを知らせるランプがチカチカ早くしろと光っている。メールを見れば木ノ瀬から一件。
「・・・・・・、」
目を細めながら木ノ瀬の意図を考えた。内容はただ一言。「今日教室で待ってるから部活終わったら連絡よろしく」つい、首を傾げてしまう。何で急に?心配でもしてくれているのだろうか。だとしたら彼は私を何だと思っているんだ、そんなに不用心じゃない。まだ春なので、帰り道が暗い。そんな中、この学園で女一人で帰るなんて危ないとちゃんとわかっている。第一帰りは先輩たちと一緒に帰ってるし・・・まぁいいや。考えるだけで埒があかない。 先輩達と帰るという理由も述べて断りのメールを木ノ瀬に送っておこうと私は返信フォルダを開いた。
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