「・・・・・・・あの、ごめんね?大丈夫?」
「・・・・・うぬ」


最初はゲホゲホと騒がしかった天羽くんは、やはり宇宙科というべきかすぐに落ち着いて私に視線を送ったかと思えば、すぐに逸らして居心地が悪そうにだんまり。
・・・うんどうしようこの空気。いや私が喋らないといけないよね。・・・・・覚えてろよ、木ノ瀬くん。


「・・・・いきなりで申し訳ないんだけど、私、天羽くんと小さい頃何回か遊んだことがあるの。」


覚えてないかもしれないけど、と言えばコクン、と天羽くんは頷いた。・・・・うわぁ・・・本人から聞くとダメージ大きくなるなぁ。


「・・・・天羽くんのおじいさんに、16歳になったら渡すものがあるって引っ越す前に言ってたんだけど・・・・、」


なんかお祖父さんから聞いてない?そう言おうと口を開いた途端、天羽くんが何かをポツリと呟いたので、え?と聞き返せば、


「・・・・・・・・違う、」
「、え」


何が?そう思って聞き返そうとして、だけど、私は天羽くんの表情に、息を呑んだ。


「あの子は、君じゃない」
「・・・・・・・」


・・・・・、あの子、ってもしかしなくても天羽くん覚えてるんじゃないの?えっ・・・・と?もしかして、私じゃないと思ってる?ええ・・・!


「渡さない。君、あの子じゃないし、俺は君のこと知らない。」
「、」


天羽くんの瞳は、私を拒絶していた。
私は、知らない。今の天羽くんを全然、知らないんだ。すっかり忘れていた。なんだかすごく恥ずかしい。亡くなった翼くんにとって大好きだった筈のお祖父さんの事に知らない人がずけずけと入ってきたら困惑するに決まっている。・・・・・・私、馬鹿だ。


「・・・・・・・ご、めんな、さい、私・・・」


どうしたら、わかってくれるんだろう。どうしたら、昔遊んだのは本当に私だってこと、天羽くんはわかってくれるかな。また、仲良くはできないのかな、


「・・・・・・・・・天羽くん、」


私は、天羽くんが、お祖父ちゃんから預かった物を、そこまで欲しかった訳じゃない。だから、話したんじゃ、ない。それを理由としただけだと思う。
だって、違うって言われた時、すごく胸が痛かった。ただ、話してみたかったんだ。私にとって、あそこで過ごした日々は大切なことだから。だから、今私はこの学校にいて、天羽くんに会えたし、覚えてないならまだしも、天羽くんが信じてくれないなんて、すごく、すごく辛い。


「お友達になってください」



(目を見開いた彼は、少し幼かった)

- ナノ -