「わたしと・・・・っと、ともだちに、なって!」


九年前、彼女は俺にそう言った。涙を溜めて、ゆらゆらと揺れる澄んだ瞳が、まるで彼女そのものを表していたのをよく覚えている。
先程まで目の前にいた女の子は、髪も長いしなまえの印象とは全然違う。こんなに女の子らしい子じゃなくて、なまえはスカートは履いてたりしてたけれど、でも髪が短くて、中性的な顔立ちをしていて、何よりよく笑う女の子だったんだ。

いつでも、よく笑う子だった。だけど、たまに、極たまに、時折見せる顔はどこか寂しそうで。なんだか泣きそうな顔をしていて、どうしたんだと問えば、すぐ笑顔を見せてくれて。俺はそれが何故か笑顔を見れて嬉しくもあったけど、気に入らなかった。
星を見てるなまえは、いつも笑顔だった気がする。嬉しそうに瞳を輝かせて、じいちゃんに星の名前をよく聞いていた。・・・・だけど、


「・・・・偶然、に決まってるのだ」


名前が、一緒というのはたまたまで、
この学園に入ったってことは、星が好き、または興味があると言うことになる。・・・・でも、それもたまたま。そう、偶然に決まってる。


「・・・・・・・、・・・・・」


あの揺れる澄んだ瞳も、きっと、たまたま。そう、きっと、違うに決まってるのだ。



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「あ、おかえりなさい!」
「こ、ぐまくんっ」
「どうだった?・・・走ってきたの?」
「た、ただいま・・・・・!わたっわたしっやった!やったよ!頑張った!」
「お疲れ様。はい、これパイナップルジュース。好きだよね?」
「ありがとう!!小熊くんっ!」


ギューッと充電するように、ジュースを持った小熊くんの手を握った。ひんやりしてて、気持ちい。

「・・・・あのね、詳しくは、その、さっきも言ったんだけど、部活が終わって、帰ったらお願いします・・・!お風呂とか終わった後でいいから!」
「うん。メールするよ」


小熊くん大好き!そう言って手をもう一度握り直せば僕もだよと笑って小熊くんも握ってくれた。
小熊くんは、昔から優しい。私が寂しかったり構ってほしい時に近くにいてくれる。私は素直じゃないから、一緒にいてほしいなんて言えない質だ。でも小熊くんは何も言わなくてもこうやって笑ってくれるから、自然と頬が緩んでしまう。
私、本当に小熊くんと同じクラスでよかった。


「・・・・あれっも、もしかして、次って移動!?」
「うん、そうだよ」
「ご、ごめん早く行かなくちゃね!待っててくれてありがとう!」
「あ、筆箱忘れてるよみょうじさん」
「えっ!?」


色んな意味で、私はいつも小熊くんに助けられてるなと度々思います。



(私を、構ってくれる男の子)
(昔は、もう一人いたな、なんて。)


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