最近、とてつもなく夢見が悪い。
毎回眠るたびに同じ夢を見ていた。
何度も自分を責め立てられるから、生きてることが苦しくなる。辛くなるけど、周りの奴には心配させたくない。こんな弱い自分を見せたくなかった。
「はぁ、」
大きく息を吐いて顔を上げるとそこは屯所で、目的もなく歩いていたらたどり着いていた。
心は誰かを求めているようで、そんな自分に自嘲する。
「なにやってんだか‥」
別に寂しいわけじゃない。連絡がなくたって、顔を合わせていなくたって‥寂しくない。
自分に言い聞かせているような言い訳を頭の中に並べるけれど思い浮かばないのは、本当のところ寂しいからで。
「いい加減、泣いちゃうよ」
小さな呟きだけ残して、その場を離れた。行く場所もなくてその足でまっすぐ帰ることにした。
万事屋の玄関に着くとまた大きなため息を吐く。
「そーいや、神楽たち居ねぇんだった」
なんでもお妙に誘われて志村家に泊まるんだとか、朝からはしゃいでいた。
気落ちしている時に家に誰もいなくて、出迎えてくれないのは寂しいもの。
そんなことを思いながら、ゆっくり戸に手をかけて開ける。でも、途中でその手が止まった。
「え、」
「何間抜け面してんだ?」
俺の目の前には望んでいたあいつの姿があって、声をかけられるものの言葉を失ってしまう。
それと同時に今まで自分の中に溜め込んだものが込み上げてきた。
「な、なんで居やがんだよ‥」
「お前が泣いてると思ったから」
その言葉に不覚にも半泣きな俺を笑うと、言葉もなくそっと両手を広げてきた。
俺はその広げられた手に何の抵抗もなくて引き込まれるように抱き着くと、そいつの肩へ頭を置いた。
「今日はやけに素直だな?」
「うるせーな、たまにはいいだろ」
「可愛いところもあるな」
また笑われてムカつくけど嬉しいのもたしかで、俺はこいつの笑顔が好きらしい。
だから、赤面して黙り込んでしまうと、腰をさらに引き寄せられて耳元で囁かれた。
「おかえり、」
ほかにも言ってほしいことはいっぱいあった。なんで連絡をして来なかったのかとか‥
だけど、その一言が嬉しくて単純な俺はそんなことどうでも良くなった。
照れ臭くなって顔を埋めて、小さな声で呟いた。
「‥ただいま」
Fin..
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