「死神様にちゃんと報告しないとね。」

First nameは腰のポケットから手鏡を取り出すと、息を吹きかけ、白く曇った上から死神様の鏡番号を書いた。

「42-42-564…と。」

プルルルと電話の音がする。それから数秒経つとその音が途切れ、電話の向こうの相手が鏡に映し出された。

「もしもし死神様?槍職人のFirst nameです。」
「魔風槍のFirst nameだ。」

First nameが持つ手鏡に、見慣れたドクロのお面がアップで映った。

「やや!First nameちゃんにFirst name君じゃない。」
「こんばんは。」
「よう。」

First nameが笑顔で挨拶する後ろで、First nameは片手をひょいと挙げ軽く頭を下げた。

「死神様、今回の課題、ちゃんとクリアしましたよ。」
「いやーお疲れ〜。頑張ったねえ。…それはそうと、君達の後ろに見えるあの瓦礫の山は何かな?」











「「あ」」

死神様に言われて後ろを振り返る。そこにはさっき戦った痕跡が大胆にもくっきりと残っていた。
シザーをぶっ飛ばした後の粉々になったレンガやら、それと一緒に倒してしまった街灯など、色々壊してしまったようだ。

「うわー!またやっちゃった!?ご、ごめんなさい死神様!」
「悪ィ…。わざとじゃねえよ…?今回も。」

“また”や“今回も”なんて単語が飛び出てくるのを見ると、この二人は今回のこのような失態を複数回起こしているのだろう。

「ハア〜〜…。First nameちゃんとFirst name君はすごい実力があるんだけど毎回これじゃちょっとねー。」

お面なのに困り顔をしながら死神様はため息を吐いた。

「本っ当にすみませんでした!」

First nameは申し訳なさそうに謝りながら勢いよく頭を下げた。First nameも、悪そうに何度もスマン、だの悪かった、だのと言っている。

「うん、いいよ。顔上げてFirst nameちゃん?」
「はい…。」
「魔風槍っていう武器は使いこなすの難しいからねえー。」
「すみません…。」
「まあまあ。…でさ、今回のこれで、君達が公共の建物壊したの何回目か覚えてる?」
「…えっと、鬼神の卵の魂狩り始めてからずっと…だよな?」

自分で言って情けなくなってきたFirst name。最後に「思い出したくも無いけど」と付け足した。

「じゃあ今魂何個集めた?」
「今回ので12個目です」
「そっか。じゃあその魂、全部没収ね」
「「!!??」」

まるで落雷を直に浴びたかのように衝撃を受けるFirst nameとFirst name。
爆弾発言投下後、驚愕する2人に死神様は手を差し出す。とは言っても“集めた魂よこせ”的なポーズだが。

「ええ―!?そ…そんなぁ!」
「ウソだろ!?」
「だって毎回建物がたくさん被害にあってるんだよ?今回はデス・シティーだったけど、その前とかカナダ行って壊して帰ってきたでしょ?」

痛いところをついてくる死神様に何も言えなくなる。悪気があった訳ではないのだが、やはり自分達のした事は良くない事だ。

「……うぅ…」
「……くっそー…」
「まあそんなに気ィ落とさないでよ」
「「(よく言うや…)」」
「実はこないだも魔女の魂取りに行ったコンビが失敗しちゃって99個集めた魂全部没収したんだよォ」
「え!」
「マジでか」

瞬間、何となく、自分達より不幸な人が居て良かったなんて思ったりする。

「うん。その子たちもかなり落ち込んでたな〜。」
「…しみじみと言うなよ。」
「そうですよ…。まあでも、私達そのコンビよりは取られた魂の数少なくて良かったけど…。」

最後に呟いたのは小声だった。



「あ、そうだ!」
「「?」」

死神様が思い出したように声を上げる。First nameとFirst nameは同時に首をかしげた。

「実は君達に大事な話があったんだ。」
「大事な話ですか?」

死神様の口から出た言葉を確かめるように復唱した。

「何だ?その大事な話ってのは。いつも思うんだが死神様が大事な話って言うときは大抵どうでもいい事なんだよな。」
「コラ、First name!」

First nameは肘でFirst nameをつつく。

「今から言うことに関しては君達次第だ。君達が考えて、君達が決めなさい」
(…“決める”…?)

死神様の言葉にFirst nameは疑問符を浮かべる。それはFirst nameも同じだった。


「これは君達のこれからの運命を大きく変えてしまうかも知れない…。だから君達がもしこの話を断っても私は何も言わない」

いつもとは打って変わった死神様の真剣な声。黙って死神様の話に耳を傾ける。

決めるだとか、断るだとか、運命を大きく変えるだとか。
気になるワードがたくさん出てきてはいるがその先を催促したりはしない。死神様がここまで慎重に進める話題ならきっと何か意味があるはずだ。


「単刀直入に言う。君達二人、死武専に入らないかい?」





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