鉤爪墓地(フックセメタリ-)
文字通り、鉤爪だらけのその墓地は、今回の補習授業の舞台となる。


「オラー!!ゾンビ野郎!!出てこいクソがぁ!!」


シドの魂を取るために、この場までやって来ていた補習組六人。
墓地にはソウルの罵声が大きく響き渡っていた。

「なぁ椿…これがシドの墓か?こんな所にまだいんのかよ?奴は動き回ってんだぜ」
「ええ…でもとりあえずはお墓かなぁ〜って…」


「はあ…これ落としたら退学かぁー…」
「死武専に入らねーかって言ってきたのあっちなのにな……」

落ち込んだ様子を隠す気もない。
そもそも退学だなどと、死神様は本気なのだろうか。そんな事すら考えてしまうほどに、今回の補習失敗の暁の対処には納得が行かない。

「退学になってたまるかよ!!出てこいや!!テメェーの授業まともに聞いたコトねェーんだわぎゃはははは!!」

狂ったように叫ぶソウル。いや、もうこれは狂っているだろう。椿は心配しながらそれを見ていた。

「別にフツーの墓だけどな…」

ブラック☆スターはブラック☆スターで、シドの墓を叩く始末だ。


「自分ではお母さん似のりっぱな鎌職人だと思ってたのに…。いつの間にかお…お…お…おちこぼれ…」

墓地の片隅にある木に向かって、ズルズルとへたり込むマカ。
今まで優等生だった分、今回の“補習”という名のこの授業はかなり彼女のプライドに傷をつけたらしい。

「マカ…元気出して?ね?」

精一杯に元気付けようとするFirst nameだったが、実際の所自分もかなり落ち込んでいる、マカの気持ちはよく分かる。

「あいつ何しょげてんだ?」
「ブラック☆スターは少し気にしよ?…ねっ?」

あまりに気にしすぎないブラック☆スターに、椿は泣きたい気持ちでそう言った。





「はあ〜……」
「ハア〜……」
「………」
「………」
「……はあ〜…」
「ハア〜……」

First nameもFirst nameも、溜め息を吐くばかりだった。正直入学してすぐ補習。しかもそれに失敗すれば退学だなんて、こんな状況嬉しい訳が無い。
むしろ最悪だ。

「シド先生って強いのかな」
「さあなぁ…。けど死武専の教師だったんならそれなりに強いんじゃねえの?」
「逆にこっちが魂取られたりね」
「そうかもな」

溜め息は吐き疲れた。もう笑うしかないと言ったように乾いた笑みが浮かんでくる。
椿はそんなFirst name達を遠くで見ながら、この二人もついに落ち込み度が臨界点に突破したのだと察した。

「なぁソウル、シドの墓にションベンでもひっかけてやろうぜ!ひゃっはっはっは」
「オウオウ!!やってやれ!!ついでにクソもひねり出せ!!COOLにな!」
「…私……立てるかしら…う…うん立てる…まだ…いける…でも立てない…」
「シド先生魂だけ置いてってくれないかな」
「あーそうしてくれるとありがたいよな」



誰か彼らをどうにかしてはくれまいか。椿は魂の底からそう思った。








「……ん…?」


地底から湧き上がるように近づいてくる音にFirst nameは気付いていた。
微かすぎるためか、他の皆はまだ気が付いていない。
しかし何かが来る。低く唸るようなその音は確実に地面に近づいている。

「…何か聞こえるな…」

First nameも周りの異変を感じ取ったようだ。

「…ひょっとして」
「ああ…。っぽいな」



確認するように、二人は背中合わせの状態でお互いの顔を見合った。


その時。


「わぁあ!!」
「!」

聞こえたのはマカの声。
そちらを振り返ると、そこには足を掴まれ宙ぶらりんにされたマカがいた。
そして血色の無い青い人間。
いや、人間ではなさそうだ。
地面から出てきたこの人物こそ、今回の補習のターゲットであるシドだった。


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