朝6時―デス・シティーの町は、少しずつ日が昇り始め、清々しい朝を迎えていた。
その一角にあるレンガ造りのアパート。そこがFirst nameとFirst nameの家だ。
特に広くは無いけれど、二人暮しにはぴったりくらいの大きさで、ちょうど今の時間だと窓から朝日が入り込んで気持ちがいい。

First nameはキッチンで鼻歌混じりに朝食の準備をする。今朝のメニューはフレンチトーストとサラダ。手際よく料理を作っていく。

するとガチャリとドアが開き、寝室からFirst nameが起きてきた。

「………First name、おはよう」
「あ、First nameおはよう。今朝は早いね」

いつもなら大体7時過ぎくらいにならないと起きないFirst nameだが、今日は早起きを頑張ったようだ。しかももう着替えを済ませている。
慣れない早起きをした所為か、まだ眠そうに目をこすっていた。

「今日は死武専に初登校するからな…。そんなときくらいは早く起きねーとと思って」
「えらいじゃない!First nameにしては」
「失敬な。」

不機嫌そうな表情になるFirst nameにFirst nameは笑いながらごめんごめんと謝った。
もし彼が寝坊しても、自分が起こしてあげるつもりだったので別に寝ていても良かったのだが、早く起きてもらうことに損はない。

「じゃあもうちょっと待ってて。あと少しでごはんできるから」
「……俺も何か手伝う。」
「本当?じゃあサラダ用のたまねぎの皮剥いておいてくれない?」
「おう」

キッチンに二人で並んでそれぞれの作業を進める。
First nameがサラダ用のドレッシングを作り、First nameは任されたたまねぎの皮剥きの仕事を素直にやっている。
First nameは料理が得意だがFirst nameはそこまで出来るわけではない。しかし出来る手伝いくらいは素直に引き受けてくれる。



「……なあ、First name」
「ん?何?」
「死武専って、どんな所なんだろうな」
「…そうだね」
「俺達、今まではっきり言って人間不信だったからさ…いまさら言うのもなんだけど、ちょっと心配だな…」
「うん…馴染めるかな…?」
「…まあ、死武専に入るって決めたのは俺らだし…それに俺はお前に着いて行くって約束してるし」

First nameは何とも思わずに発した言葉だったのだろう。しかしFirst nameにとってはとても嬉しいものだった。

「…ありがとう」
「当たり前だろ。武器と職人の関係なんだから」
「…違う…それだけじゃないよ。私たちは“家族”でしょ?」
「…!」
「きっと、何とかなるよ」
「そう……かな…」

First nameはまだ少し心配そうだった。無理も無い。その気持ちはFirst nameにもよく分かるから。

「大丈夫だよ。これは私が決めたことだから。入学するって決めたのは私だし、何とかなるって決めたのも私。自分で決めたことくらい、自分で叶えなきゃ。
それにFirst nameがそんなに弱気なんてらしくないよ?」

「……そうだな…。まあなるようになるよな」
「うん、きっとそうだよ」

そう言って笑い合った。
いつもは結構いい加減な性格のFirst nameでも、やっぱり不安になることくらいある。
いつもより早く起きてきたのも、色々と不安だったからだろう。

昨日の夜ちゃんと眠れたのかな。First nameはそう考える。



「……っていうかFirst name!」
「あ?」
「たまねぎの皮剥きすぎ!!」
「え?うお!?」

First nameは叫ぶと、First nameの手からたまねぎを奪い取った。First nameは驚いて目を見開くことしか出来ないでいる。

「たまねぎは必要最低限の分だけ皮を剥けば後は“実”なの!その“実”まで剥いてどうするの!?せっかく食べられる部分だったのに…」
「いや知らねーし!!…っつーかそういうことは最初っから言えよな!」
「First nameなら分かると思ったから…。たまねぎという野菜はどこまでも皮じゃないってこと。ああ〜もったいない…」

しょぼんと項垂れるFirst nameを見て、First nameは心の中で「節約好きめ…」と悪態をついた。

「まあいいや、以後気をつけてね?」
「おう…何か…スマン…」
「じゃあレタスでもちぎっといて」
「いきなりしょぼい作業になった!!」
「あ、レタスのちぎり方…教えようか?」
「いいわ!そんくらいわかるわ!!」













時は数時間後。場所は死武専こと死神武器職人専門学校。


「なあ、マカ?」
「うるさい、今本読んでるの。邪魔しないで」

教室では授業が始まる前の自由時間を、それぞれ生徒達は思い思いに過ごしていた。

「何怒ってんだよガリベン」
「………………」

この少年はどうしてこうピリピリしているパートナーに向かって、さらに気性を逆撫でするような事を言ってしまうのだろうか。
ソウルの一言にムカッとしたマカは、今まで読んでいた分厚い本をおもむろに閉じると、その背表紙をソウルの脳天めがけて勢いよく振り下ろした。


「マカチョーップ!!」


ゴン!!と鈍い音が響く。分厚い本は見事ソウルの頭という的にヒットしたのだった。
ソウルはというと情けない声を出し、頭からシュ〜と煙を上げている。マカは、何事も無かったかのようにソウルに致命傷を与えたその本を開き、また読み始めた。

「マジイテェー…」
「何?話って」

マカが話を変えるように言った。

「あのなさっき聞いた話なんだけど」
「うん」
「前任の先生…何つったっけ?くたばったろ?自由の女神がみけんに刺さってさ」
「シド先生ね…“みけんに女神事件”。それが?」
「知ってっか?最近死武専の生徒が変な男に狙われてるって話。隣のクラスの奴がボコられたらしいぜ。それでその犯人を見た奴が変なこと言ってたんだ。犯人の姿が変わってるんだと…」
「……うん」
「その犯人の姿が―…」


ソウルはそこで一区切りすると、次の瞬間恐ろしい顔で勢いよくマカに飛び掛った。


「みけんに穴の開いたゾンビだったぁあ!!」
「いぎゃぁあああ!!」

マカの叫び声と共に、ソウルの頭に、本日二度目のマカチョップが直撃した。再び撃沈するソウル。

「なぐるコトねェだろ…」
「それがシド先生だって言うの?ウソウソ、どうせ誰かの作り話でしょ」
「あ、それともう一つ大ニュースがあんだけど…」
「……何」
「…そんな目で見んなよ…。何か今日このクラスに新入生が来るらしいぞ?」
「えっ?ほんとに?」

マカは少々驚いたように目を見開き、ソウルを見た。
しかしそこにいたのは、先程のマカチョップが効いたのか、不貞腐れて口を尖らせたパートナーで、少し吹き出してしまった。

「ぶっ」
「っマカてめェ何笑ってやがる…!」


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