深夜2時のデス・シティーの町。暗闇と静けさに包まれた空間の中で、奇妙に輝く空の月だけが、唯一の光源だった。
真夜中に物音はしない。暗く、低く、そして恐ろしい。それが夜の闇だ。

その町を、一人の少女が駆けていく。素早く、静に。
その手には大きな槍が握られていた。

少女は目的の男を発見すると、一軒の家の屋根の上にひらりと飛び上がり、そこから相手を見下ろした。そしてそいつの姿を確認すると、息を潜めて呟いた。

「…見つけた。アイツが今回の獲物ね。」

可愛らしい声とは裏腹に、鋭く尖らせた視線を相手へと向けじっとうかがう。
月の光に照らされて、やけに妖艶に見える少女は美しかった。

「First name、ちゃんと仕留めろよ。」

少女の手にある槍から囁くような青年の声がした。First name、と呼ばれた彼女は、ニコリと微笑む。

「うん、分かってるよFirst name。」

槍の少年の名はFirst name。First nameのパートナーで、魔風槍という魔武器の槍だ。


「じゃあ、行きますか。」

言うより早くFirst nameは屋根から飛び降り、一回転を繰り出しながら見事着地を決めると狙いを定めた相手の前に姿を現した。

「若い長髪の女性ばかりを狙う殺人鬼、シザー・アーム。鬼神の卵と化したお前の魂…いただく」

「…ケケケケ……」


不気味な笑い方でFirst nameを見るシザー・アーム。一つも人語を喋らないところ、どうやら彼はもう正気を失っているらしい。
完全に鬼神への道に進む気だ。

「呆れたぜ…こいつ言葉も喋れなくなっちまったのかよ。」

ため息を吐き肩を落とす素振りをして見せるFirst name。それにクスリと微笑をこぼして、First nameは相手に向き直った。

「行くよ」

その言葉とほぼ同時に相手の目の前に移動し槍を振り上げる。

「はあっ!」

First nameが叫び槍を一振りすると、風が巻き起こりシザーが吹き飛ばされた。そのまま壁に突撃し、真夜中に似つかわしくない大きな破壊音が響き渡る。

槍を振り槍で叩き槍で切り裂く。
風で巻き上げ風で叩き落し風で切り裂く。
次々と、相手にドスの効いた攻撃を繰り出していく。
厄介な風と隙の無い素手での攻めにシザーはみるみる追い詰められる。

「やあァ!」

First nameの攻撃が休まる事はなかった。シザーが周りの建物に叩きつけられ、段々と機動力を失くしていく。

「グ……ケケケ……」
「いいぞFirst name!もっとやれ!」
「うん!」

First nameはとどめの一撃を仕掛けた。
それと同時に相手も反撃にかかろうとしたが、散々やられた上で敵うはずも無く、First nameがシザーの懐に潜り込み魂の波長を打ち込むと、シザーの身体が消え光り輝く魂が現れた。

「ふぅ…」
「お疲れさん。」
「うん、First nameもね。」

First nameはしゅるりと、槍から人間にその姿を変えると宙に浮いているシザーの魂を掴んだ。

「んじゃ、ありがたく頂きます。」

そう言ってそれを口の中へと入れる。

「これで12個目の魂ゲットしたね!」
「ああ。少しずつだけどデスサイズに近づいて来たな。」


二人は笑い合いお互いの拳を軽くぶつけた。






First nameとFirst name。
互いの波長に魅了された、熱き魂を持つ職人と武器。


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