「これが死武専かあ…」
「近くで見るとよりでっけ〜…」
「もうしばらくデス・シティーには住んでるけど、初めて近くで見たね」

朝食も食べ終わって、準備を済ませ家を出たFirst nameとFirst name。二人は今、死武専の正面昇降口まで来ていた。
デス・シティーで暮らし始めてからそれなりに経つが、死武専に用がある事はなかったため、First nameもFirst nameも死武専に来るのは初と言っていい。

「…じゃあ………行こうか」
「お…おう……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
「…い、行かないの……?」
「…お前こそ、行かねーのかよ…?」
「First nameが行くの待ってるんだよ……」
「俺だけ行っても仕方ねーだろ…。いや、ていうかこういうのはお前が先に行けよ…。そしたら着いていくからさ…」
「え〜……」

来たはいいものの、緊張が祟ってなかなか初めの一歩が踏み出せない。
First nameはFirst nameが、First nameはFirst nameが先に行くのを待っているようだが、二人共先に行く勇気は出ないようで。


「…よし!じゃあ“せーの”で一緒に行くよ?」
「よし、…そうするか」
「……いい?」
「おう…」
「じゃあ行くよ…?」
「「………せーの!!」」





……………――




「………行ってよ!」
「いや、お前も行けよ!」





まさかの結果。しかし予想はついていた。
どっちも進めない、というか進まないという事態が発生したのだった。







そして10分後。


「はぁ〜…」

First nameは安堵の溜め息を大きく吐いていた。

「なんで校内に入るだけなのにこんなに疲れないといけなかったんだ……」

二人はあれから何とか教室の前の廊下までやって来れていた。結局、これではいつまで経っても中に入れないと思ったFirst nameがFirst nameより先に一歩踏み出した事によって、あの状態を打開できたのだった。
家庭的なことは不得意だとしても、こういう面では兄のような頼もしさがある。

「よし。呼ばれたら入ればいいんだよな?」
「う、うん。そうだと思う」
「じゃあ次こそお前から入れよな」
「ええ!?…うーん、分かったよ…」

先ほどの恩があるため、ノーとは言えなかった。コソコソと教室の中には聞こえないくらいの小声で話す。
そもそも教室の中はがやがやうるさいので、普通に喋っても聞こえないとは思うが。

すると後ろから、赤毛でスーツを着た男の人がやってきた。

「あ」
「お?」
「あれ?お前らがウワサの新入生か?」
「あ、ハイ…」
「お前は教師なのか?」
「ああ、まあ臨時だけどな。デスサイズだ、これからよろしくな」
「よろしくお願いします!」

First nameは深々とお辞儀をする。少しだけ緊張が解けたのは、死武専の人間に僅かだが関わったからなのかもしれない。

「…ってデスサイズ!?」
「マジでか!」
「ああ。まあな」

自分達の目指すものが、目の前にいる。
いかにも当たり前といった風に答えたデスサイズに、First nameとFirst nameは驚きと少しの憧れを抱いた。

「じゃあ少し待っててくれ。俺が呼んだら入って来るんだぞ?」
「ハイ」
「おう」

そう言ってデスサイズは教室の中に入っていった。








廊下で待たされているFirst nameとFirst nameには、教室でのやり取りが聞こえていた。

「…おい。教室の中、ふざけた空気だな」
「授業を始める前とはとても思えないね…」

苦笑しながら二人は教室での会話を聞いていた。デスサイズと、一人の男子生徒の声、そしてたまに女の子の声がが聞こえてくる。
出席をとるだのとらないだの、女はとるだの男はとらないだの。とりあえずくだらなかった。

「俺達こんな学校に入るのか。」

ギャーギャー喚き声が聞こえる教室の様子をうかがいながら、ちゃんとやっていけるのかよと呟くFirst name。

「デスサイズさんじゃなかったらまあ…大丈夫なんじゃないかな、授業。」

そんな会話をしていたFirst name達にも、ついに来るべき時がやって来た。デスサイズが教室のドアを少し開け、外に居るFirst nameとFirst nameに声を掛ける。

「待たせて悪かったな。もう入っていいぞー」
「は、はい!!」

First nameはどもりながら返事を返す。さっきまでは全然だったのに、どんどん不安になってきた。

「First name、頑張れ」
「うん…じゃあ私の後にちゃんと着いてきてね」
「分かってる」

一呼吸、自分を落ち着かせるように、目を閉じて、吸って吐く。

目を開けたと同時に、彼女の中でも準備が整った。



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