授業が終わって昼休み、弁当よりも学食派の俺達は良い席がなくなんない内にってダッシュで食堂に向かった。 ちらほら人がいるけど、窓際の席とられてないからラッキー。貴重品を抜いたカバンを椅子に置いて、何食おうかって悩む。 昨日はラーメン食ったし、今日はご飯ものの気分。洋定食、はパスタとか出そうだしなぁ…高いし。 食券売り場の前でうんうんと悩んでると、首がぐえって絞まった。びっくりして振り返ると昌明(まさあき)がけだるそうに俺の首を腕で絞めてた 「っぐ、何すんだよ!」 「後ろ詰まってんだよ、早く決めろ」 思わず怒鳴る俺に、昌明は呆れたように溜息を吐いて後ろを指差す。そこには昌明が言った通り結構な人数が並んでた。 うぐ、とバツが悪くなり何にしようかと数瞬悩んで、カツカレーと唐揚げとデザートのプリンのボタンを押した。 俺が退くと昌明が小銭を入れてピッてボタンを押す。何食うんだろ、一口欲しい。俺達が退くと次の人達もどんどん買ってたからマジで俺邪魔になってたみたいだ おばちゃんに食券渡して、ちょっと待ってたらすぐにお盆の上に皿が乗っけられた。美味そう 別の列に並んでた昌明ももう渡されたところだったみたいで、コップに水注いでた。ついでに俺の分も頼んでおいた カレーだから福神漬けを端っこに置いて、あとスプーンと昌明の分の箸も取っておく。定食だったし箸でいいよな 「腹減った!」 「いいから大人しく座ってろ」 お盆の上に載った飯が滅茶苦茶美味そうで、席とっといた場所に座って昌明を待つ、早く来いって一人でそわそわしてると水を手渡されて冷静にそう言われた 向かいに座る昌明は日替わり定食にしたらしい、お盆の上にはチキン南蛮とみそ汁とお新香にきんぴらとご飯。 今日の定食美味そうだなって見てると、視線に気付いた昌明がチキン南蛮を一切れカツカレーのご飯の上に乗っけてくれた、やっさしー お返しにって唐揚げの下に敷いてあったレタスをきんぴらの横に置く。…うん、物々交換 「……お前なぁ」 「いや、だって葉っぱじゃんそれ」 葉っぱとか人が食べるもんじゃない、うさぎとかが食うもんだ。だから俺はレタスなんて食わない。 トマトとかキュウリとかの葉っぱ以外の野菜なら食うんだけどなぁ…葉っぱとかそこら辺で生えてんのと一緒にしか思えなくてどうしても食えない 「俺のチキン南蛮とお前のレタスじゃ対等じゃないと思うんだけど」 「……えー、じゃあカレー一口やるよ」 一瞬唐揚げ分けてやろうと思ったけど、チキン南蛮と被ってるしってスプーンで一口掬って昌明にあーんする。 …何かこの画、男同士だと寒いだけだ。彼氏彼女なららぶらぶで良いし、女の子同士でも仲良さそうでいいけど男だとダメだ、気持ち悪い。 カレー食った昌明は美味そうに頬を緩めて俺が半ば押し付けたレタスをもしゃもしゃ食い始めた。 何であんな葉っぱを何もつけないで食えんだろ、すげぇ。俺は草食動物じゃないから無理だ 俺も一口カレーを食って、その後カツを半分にスプーンで割って食う。美味い美味い。唐揚げもスプーンで半分に割って口ん中に放り込む。うま そんなもしゃもしゃと肉ばっかの食事をしている俺を、じっと見つめる昌明。何だ、もう分けてやんねーぞ じとりと睨み付けると呆れたように溜息を吐かれた、何だよ何か言いたいなら口で言えっての。 そう思いながらカレーを一口。昌明はもやしの入ったみそ汁を啜る。…あれ、今日の午後って授業なんだったっけ 「お前さぁ、その野菜嫌いどうにかしろよ」 「別に嫌いじゃねーし。ただ葉っぱ系が苦手なだけだ」 「前、ピーマンとかブロッコリーも俺に渡してきたよな」 「…うぐ」 いや、それはしょうがない。だってピーマンとか苦いし、ブロッコリーはもう視覚的に無理だし。何あのぶつぶつきもい。 あとニンジンも嫌い、あれ不味い。でもカレーに入ってんのは平気。ニンジンの味がすんのが嫌い。ほら、バターでソテー?したのとか激マズ 「昨日の夕飯だってお前肉ばっかで野菜摂ってなかったろ」 「…だって、まっじぃじゃん」 「野菜食わないと太るぞお前」 「…へいへい」 メタボは嫌だなぁ、部活も辞めちゃったから運動全くしてないし今。肉ばっか食ってたらダメなのは分かってるんだけど。 でも量はいっぱい食べたい男子高校生、肉食ってエネルギーにしたい。けど最近腹回りが気になるのも確かだ。 って、あれ。でも俺、昌明と昨日飯食ってないし飯の話もしてないよな?あれ?ん、したっけ。ぅん? いやもしかしたら昨日の夕飯ハンバーグだった的な事は言ったかもしんないけどそれだけで野菜食ってないっていうのにはなんないよな、な? どうせ俺の事だから食ってないんだろっていう考えでの話かもしんないけど、それにしては断定的だったっていうか。 ハンバーグだって和風なら大根おろし付くし、洋風でもじゃがいもとか付け合せで付くし。俺イモは好きだし。 いやまあ昨日のハンバーグは付け合せなくてサラダがちょまって置かれてたから食わなかったけど。レタス入ってたし あれ、何か俺が変に違和感抱いてるだけ、か?…そう、なんかな。うん多分そうだ。きっとそうだ やぁね、俺ったら変にシリアスぶっちゃって!もうお茶目さんにもほどがあるぜ。まあ俺の食生活見てたらそれぐらい分かるっていうねー 「……昌明?」 「ん、ぁ? んだよ」 でもちょっとだけ不安になって名前を呼ぶと、昌明は口元を一瞬綻ばせて嬉しそうに俺を見つめた。 何だよその意味深な視線、気持ち悪いぞお前。大丈夫か。目を丸くしてるとふい、って俺から視線逸らしてまた黙々と飯食い始めた …取り敢えず、うん、気のせい。普通に気のせいていうか気のせいじゃなかったら何なんだっていう だからやけに視線を感じるのも気のせいって事にしておこう。この視線の意味に気付いたら俺色々終わる、俺終了のお知らせになる main |