#高校生設定
詰めたままの息が苦しい。思わず身動ぎしてしまい揺れた肩がすぐ後ろの本棚にぶつかる。かたん、と小さく響いた音に、私の顔の横につかれた腕がさらに逃げ道をなくすかのように近付いた。
なんだって、こんな状況に私は陥っているんだろう。
見上げた先、本当にすぐ近くにある李典の顔は、どこか焦ったような、それでいて自分の行動に若干の気恥ずかしさを感じているようにも見えた。
「…李、典」
「…何だよ」
何だよ、じゃない。
本棚を整理していたら突然現れて突然壁ドンしてきたのはそっちだろう意味分からん。そういえばちょっと前に壁ドンはやってたけど、――って違う。そういうことが言いたいんじゃない。
「…離して」
「…嫌だ。今離しちゃいけないって俺の勘がそう言ってる」
いや、やっぱり意味分からん。
李典が『俺の勘』云々といったことを口にするのは珍しくない。というより、しょっちゅうだ。
李典とは去年から同じクラスだしそれなりに仲も良い部類に入る。だから普通に話す分にはいつもと何ら変わりない、至極よくあることだ。
だからこそ、今はイレギュラーな要素があるからいけない。
「なんか、この体勢恥ずかしいからやめて欲しい、ん、だけど」
「…俺だって恥ずかしいっつうの」
じゃあするな。
目でそう言うと、李典は顔をうっすら赤くして眉間に、ぎゅっ、と皺を寄せた。――私の逃げ道を塞いでいる腕は、外さない。
それからしばらく長い時間が流れた気がする。(実際は1分と経っていないんだろう)
妙な緊張感に包まれていたその場に突然、――アッ、という息を飲むような声がして、私と李典は同時に横を向いた。
「――み、見ていません!私は何も!おおお邪魔しました!」
顔を覆うように隠した指の隙間から私達をがっつりガン見して、――楽進は大慌てで姿を消した。失礼しました、という間延びした大声と共に、机か何かに盛大にぶつかる音が聞こえた。
唖然となった私と李典は同じタイミングでゆっくりと顔を見合せ、瞬きを数回する。
「…見られたじゃん」
「…良いだろ別に」
「全然良くない」
もう一度、離して、と続けた私に、李典はぐっと押し黙り、腹を括ったような顔で私を見つめ口を開いた。
「……今日、一緒に帰らねぇ?」
――この意気地無し!!
好きって言ってよ多分私も同じだから
リクエスト内容[李典/甘/学パロ]
恋は片想いしてるときが一番ドキドキして楽しいって聞いた。もうそんな初々しい頃なんて到底思い出せませんが、こんな感じで一つどうでしょうか。みい様のお気に召して頂ければ良いのですが…(´v`;魯粛連載にもコメント頂き、ありがとうございます!これからも楽しんで頂けるお話が書けるよう精進して参ります=3今回はリクエストありがとうございました(^^)