#現代設定



なんだか額が冷たい。
軽い重みと感覚に、無意識に唸るような声が漏れた。そのまま重い瞼をゆっくりと持ち上げる。
だんだんとクリアになっていく視界に、柔らかな朝の光と見慣れた顔が映った。

「…張コウ…?」
「おはようございます、唯緋」

お加減は如何ですか、と心配そうな表情を浮かべ小さな声で聞いてきた張コウに、やっと自分の状態を理解する。
頭がぼうっとして体がだるい。口を動かすのも億劫なくらいだ。
風邪を引くようなことはしていないはずなのに、と記憶をあさるが、途中で面倒になってやめた。
私の額に乗せていた手を下ろした張コウは、私に掛け布団をかけ直しながら静かに話す。

「今朝、電話をしたときから様子がおかしいとは思いましたが、来て正解でした」
「…電話…」
「覚えていませんか?」

ゆっくり頷くと、張コウは困ったように微笑んで掛け布団の上から私の体を労るようにさすった。
でしょうね、という言葉に、ぼんやりと記憶が蘇る。そういえば6時頃に、張コウ定例の『休日も美のため早く起きなさい』コールがあったような気がする。自分が何喋ったか全く覚えてないけど。

「とりあえず今日はゆっくり休むことです」
「…張コウ、は…?」
「ここにいますよ」
「…そっか…」

優しい声でそう言ってくれた張コウに、へにゃ、と子どもみたいに笑う。張コウはそっと私の前髪を横に流し、出ていた私の左手を掛け布団の中に入れた。そしてそのまま私の手を軽く撫でる。
張コウの手のひんやりとした温度が心地よくて、上手く力が入らない指で彼の指を握り締めた。

「唯緋?」
「…張コウの手、冷たくてきもちいい…」

こうしてていい?
熱で掠れて自分でもよく聞き取れない声だったが、張コウは綺麗に微笑んで私の手を握り返してくれた。
彼と指を絡めている左手はひんやりとしているのに、胸は不思議とぽかぽかした。そしてそれに酷く安心する。

浅く息を吐いて何度か瞬きをする。張コウが大きな背を屈め、ゆっくりと私の額に唇を落とした。
そしてそのまま、瞼、鼻の頭、頬と移動していくそれにくすぐったく感じて小さく身を捩る。ほんの少し笑みを浮かべると、張コウも笑ったのが気配で分かった。

「…風邪、移るよ」
「ならば、唇に触れるのは唯緋の風邪が治ってからにしましょう」

おどけたようにそう言って笑う張コウに、絡めた指に少しだけ力を入れて返事をする。
張コウは最後に私の目尻にも唇を落とし、ゆっくりと離れた。きっと、眠りなさい、という合図なんだろう。
目覚めたときには私は元気になっていて、側には張コウが居るのだ。淀む意識のなか、そう考えながら目を閉じた。




てのひらからしあわせ






リクエスト内容[張コウ/甘々]
張コウさんが側についててくれるなら何回でも風邪を引きたくなるダメ人間は私です。甘々とのご要望を頂き、精一杯頑張りました…!桜様にご満足頂ければ良いのですが(^ω^;)わ、私の書く張コウさんがお好きだなんて言って頂けて…!感無量ですここが楽園か
あたたかなコメントも、本当にありがとうございます!今回はリクエストありがとうございました(^O^)



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